[II-PD03-01] 心臓MRIがQp/Qsの評価に有用であった大動脈二尖弁を合併した肺動脈閉鎖症兼正常心室中隔の1例
Keywords:肺総脈閉鎖症兼正常心室中隔, 大動脈二尖弁, 心臓MRI
【背景】大動脈二尖弁(BAV)を合併した肺動脈弁閉鎖症兼正常心室中隔(PA/IVS)はまれであるが、当院では13例を経験がある。体循環から肺循環への盗血と唯一の流出路が狭窄し低拍出状態になるため非常に予後不良である。【症例】在胎34週4日、出生時体重 1100gで出生した。心エコーでPA/IVS, BAVと診断した。三尖弁輪径 67% of N, 大動脈弁輪径 106% of N, 大動脈弁通過血流速度=2.3m/sec、類洞交通も認めた。体重増加後6か月時にcentral shunt術を施行したが、SpO2 70%前半で推移した。心臓カテーテル検査(心カテ)ではQp/Qs=4.3/4.2 L/min/m2=1.0, MRIではQp/Qs=3.2/3.1 L/min/m2=1.0と肺血流は適切で呼吸補助と利尿剤投与にて一定の改善を認めていた。しかし、SpO2 60%後半と緩徐増悪し1歳8か月に造影CTで上行大動脈(AscAo)拡張によるシャント圧迫が原因と疑われた。シャント追加検討目的の心カテではQp/Qs=2.7/2.6 L/min/m2=1.0, LVEDP 20mmHg, LVEDV 274 % of N, LVEF 49%であり拡張不全兼低心拍出と考えられた。シャント追加すればQsが減少し循環不全に陥る可能性が高いと判断し、ピモベンダンを開始した。2歳1か月時のMRIでQp/Qs=3.0/6.0 L/min/m2=0.5, LVEDV 252% of N, LVEF 57%と、心拍出量は十分だが肺血流は乏しかった。Qsは著増しておりシャント追加可能と判断し、2歳2か月でmodified BT shunt術とAscAo縫縮術を施行した。術後1か月のMRIはQp/Qs=5.1/2.7 L/min/m2=1.9, LVEDV 354% of N, LVEF 48%と高肺血流の状態で、Qpの内訳はcentral shunt 65%, BT shunt 29%, APC 6%であり、AscAo縫縮による圧迫解除がおおきな要因になっていることが推察された。現在も心不全の厳重な管理を要している。【まとめ】BAVを合併したPA/IVSは低拍出状態である中で体肺血流をコントロールしなければならず、シャント術の追加は慎重に検討する必要がある。MRIによる経時的なQp/Qs評価が方針決定に極めて有用と考えられる。