[II-PD03-04] 非典型臨床像のため、冠攣縮薬物誘発試験を行い確定診断に至った冠攣縮性狭心症の12歳女児例
Keywords:冠攣縮性狭心症, 冠攣縮薬物誘発試験, 小児
【背景】冠攣縮性狭心症(CSA)は冠攣縮により生じる狭心症で、小児期発症は極めて稀である。今回、川崎病を含め特に既往症のない女児が胸痛発作を主訴に受診。CSAの典型的臨床像ではなかったが、冠攣縮薬物誘発試験を施行した事でCSA確定診断に至った症例を経験したので症例提示する。【症例】12歳女児。川崎病を含め特に既往症なく、冠動脈疾患や突然死の家族歴もない。11歳から運動中に約5分の胸痛発作を認めるようになった。次第に安静・運動関係なく同様の発作を、さらに連日発作が起きるようになり前医受診。ホルターで胸痛発作に一致して明らかな水平型ST低下(0.2mV)を認め、精査目的に当科紹介受診。問診では放散痛、動悸、めまい、失神は伴わず、深夜から早朝にかけての時間帯では発作なく、吹奏楽部(トロンボーン)演奏中に発作を起こした事はなし。12誘導心電図、トレッドミル、心エコー、トロポニンTにも異常なし。胸痛の原因として、CSA以外の冠動脈狭窄等の器質的心疾患は否定的で、心因性も念頭に置くような状況であった。しかし、ホルター所見から精密検査として冠攣縮薬物誘発試験を本人・親に提示。希望され冠攣縮薬物誘発試験を行った。アセチルコリン冠注(50μg)を行うと胸痛、ST変化(V2-5で0.3mV上昇、II,III,aVFで0.1mV下降型低下)、左右冠動脈ともにびまん性の重度冠動脈縮小(90%以上)を生じ、CSAと確定診断。Ca拮抗薬定期内服開始後、発作は著明に減少。【結語】小児の胸痛の原因の多くは心原性以外のものであり、心疾患に伴う胸痛は約5%である。小児期発症CSAは極めて稀であるが、診断が遅れると突然死や冠攣縮性心不全を来たす恐れもある。CSAの臨床像として典型的ではなくても小児の頻回胸痛では、リスクを説明、十分な準備をした上で、冠攣縮薬物誘発試験を実施する事は考慮してよいと考える。