[II-PD04-01] 左室冠動脈瘻を合併した左心低形成症候群に対するNorwood手術の1救命例
Keywords:左心低形成症候群, 左室冠動脈瘻, 心筋虚血
(背景)左室冠動脈瘻(LVCAF)を合併した左心低形成症候群(HLHS)におけるNorwood手術は冠動脈への十分な血液灌流がなされず心筋虚血を招くことで、mortalityが高いことが報告されている。(症例)39週6日、2956gで出生。出生後、HLHSの診断で当院搬送され、心エコーでHLHS(MS,AA)の診断となった。心臓カテーテル検査にて、左室造影でRCA, LCxを介して上行大動脈に造影されるLVCAFを認めた。冠動脈造影では、RCAは順行性に末梢まで造影されるが、LVCAFを介して左室までは造影されず、LCAは拡大したLMTを認め、LAD, LCxは低形成であった。Balloon atrial septostomyを行ったが、両心房間の圧差は5mmHgで変化はなく、虚血所見も認めなかった。生後3日に両側肺動脈絞扼術を行った。生後32日目にNorwood手術をRV-PA conduitを用いて行った。人工心肺開始後と心房中隔壁切除後に一過性のST低下を認めたが、いずれも自然回復した。大動脈弓再建中は上行大動脈に大動脈弓内側から逆行性にカニューレを挿入し、冠灌流を維持して、心停止させずに大動脈弓を再建した。人工心肺離脱を試みたが、右室心尖部と前壁の収縮能が低下し、離脱困難にてECMO導入しICU帰室した。術後徐々に心収縮能の改善が見られ、術後3日目にECMO離脱した。現在、人工呼吸器離脱し、一般病棟で管理中である。直近の心エコーではRVFACはECMO離脱後に比べ0.32→0.44と右室機能は回復し、左室からのLVCAF血流も減少していた。(結果)本症例は一度心停止すると左室減圧により心筋虚血を来たすと判断し、心停止させずに手術を行った。しかし、術中一時的なST低下のみではあるも、結果的に右室心筋虚血が原因と思われる収縮不全を来し、人工心肺離脱困難となったが、徐々に回復し、救命し得た。(結語)LVCAFを合併した症例のNorwood手術では心筋虚血回避という点で左室減圧をいかに防ぐかが鍵となるが、beating手術以外にも更なる工夫が必要と考える。