[II-PD05-03] 多脾症、半奇静脈結合を有するFontan児の遠隔期チアノーゼに対する病態把握および治療方針決定における血流解析の役割
Keywords:血流解析, 4D flow MRI, 流体シミュレーション
症例は12歳女児。診断は多脾症、単心房、右室型単心室、肺動脈閉鎖、左上大静脈遺残、半奇静脈結合。1ヶ月時にBlalock-Taussig変法、10ヶ月時にtotal cavopulmonary shunt (TCPS)施行。2歳時に心外導管(18mm ePTFE graft)を用いて肝静脈-右肺動脈バイパスを行い、total cavopulmonary connection (TCPC)とした。術後の経過は良好であったが、就学前(5歳)のカテーテル検査の時点でSpO2は94%と低下傾向にあった。コントラストエコーでは左肺動脈が陽性(1+)となり、左側に肺動静脈瘻(PAVF)の存在が疑われていた。その後もSpO2は徐々に低下し、無症状ではあるが12歳時にはSpO2は91%まで低下していた。カテーテル検査を再検したところ大動脈圧は107/69mmHg、半奇静脈、左上大静脈(LSVC)、右上大静脈(RSVC)、肝静脈、肺動脈の圧はいずれも11mmHg、肺動脈楔入圧は6mmHg、右室拡張末期容積は92% of normal、駆出率は52.9%で房室弁の逆流は軽度であり、Fontan循環は良好に成立していると考えられた。コントラストエコーは両側肺で陽性(2+)であり、両側においてびまん性PAVFの発生が疑われた。在宅酸素療法が導入され、治療方針の検討のため4D flow MRIを施行した。Fontan循環における血流量は左右肺動脈で差は認めないが、中心肺動脈(両側SVC吻合部間)の血流は右方向であり、肝静脈血流は右肺動脈にのみ分布していることが分かった。エネルギー損失(energy loss: EL) は半奇静脈弓からLSVC-肺動脈吻合部にかけて上昇しており、Fontan循環全体のELは0.58mWであった。体心室の駆出率50.5%と良好に保たれており、ELは0.95mWと上昇を認めなかった。PAVFの塞栓術は困難であり、肝静脈血分布異常を是正するための外科的介入として肝静脈-半奇静脈バイパスやY字グラフトによる両側肺動脈再分配手術などが考えられた。実際に肝血流不均衡を改善できるかどうか、シミュレーションで検討した結果をもとに議論する。