[II-PD05-05] KCND3遺伝子変異が発見されキニジンが奏効した早期再分極症候群
Keywords:早期再分極症候群, KCND3遺伝子変異, キニジン
早期再分極症候群(Early repolarization syndrome; ERS)は、下側壁誘導にJ波が出現し心室細動(ventricular fibrillation; VF)が惹起される疾患で、J波症候群とも呼ばれる。J波の成因には一過性外向きK+電流(Ito)の増大が関与していると推定されているが、ERSの原因、病態は不明な点が多い。今回、ItoをエンコードするKCND3遺伝子変異が発見された症例を経験した。【症例】12歳、男性。1歳時から難治性てんかん、重度発達遅滞、心房粗細動、心室性期外収縮のため通院していた。昼寝中にVF発症し救急隊により蘇生されたが、入院後もVFを反復した。J点の増高が著明であり、Isoproterenol持続静注でJ波は消失し当初のVFは治まった。遺伝子解析で、ItoチャネルのαサブユニットであるKv4.3をエンコードするKCND3のde novo変異Gly306Ala(c.917g>c)が発見された。機能解析で、機能獲得型変異でありItoを増大させることも判明した。ICD植込み後もVFコントロールに難渋していたが、Itoを抑制するキニジンの投与でVFが出現しなくなった。同時に、長年抑制できなかった脳波異常がほぼ消失し、けいれん発作もみられなくなった。【考察】今回、Itoを直接増大させる遺伝子変異がERSで初めて同定された。KCND3遺伝子変異は、これまでにBrugada症候群、心房細動と脊髄小脳失調症で報告されており、心筋細胞と同様に神経細胞の膜電位にも関与していると考えられている。本症例では、キニジン投与によりVFとともにけいれんもコントロールされており、難治性てんかんにもIto増大が関与していたと考えられた。最近、てんかん症例では突然死のリスクが高いと報告されており、また別に突然死症例での本遺伝子変異が報告されている。本症例を通して、KCND3遺伝子変異はERSを含め突然死をきたすチャネル病の原因遺伝子として検索すべきであること、それに対しキニジンが有効な可能性があることが示唆された。