[II-S06-02] 先天性心疾患術式の改良:左心低形成症候群、完全大血管転位症Ⅲ型、部分肺静脈還流異常症
キーワード:左心低形成症候群, 完全大血管転位症, 部分肺静脈還流異常症
左心低形成症候群、完全大血管転位症Ⅲ型、部分肺静脈還流異常症に対して術式の改良を行った。 1)左心低形成症候群における補塡物非使用大動脈弓再建術(Chimney 法):本症に対する大動脈弓再建はhomograftやglutaraldehyde処理自己心膜などを補填する術式が行われているが補塡物の成長・石灰化などの問題が残る。直接吻合法では新大動脈弓下方が狭小となり、気管や肺動脈圧迫が懸念される。Chimney 法では肺動脈主幹部から左右肺動脈開口部切除部を縦方向に縫合し、主肺動脈を円錐形に形成、長軸方向延長ならびに短軸方向短縮を行う。補填物を用いることなく流体力学的にも理想的な大動脈弓再建が可能である。 2)TGA, VSD, PSに対するHalf-turned truncal switch手術:従来のRastelli、REV手術では遠隔期両心室流出路狭窄が問題となる。本術式は両半月弁を一塊として切除し反転させた後、対側の流出路に再吻合する。導管などの補填物は不要。広く直線的な両流出路が再建可能。大血管関係が前後で、肺動脈/大動脈弁輪径比が0.3~0.8の症例(軽度~中等度肺動脈狭窄)が良い適応となる。 3)部分肺静脈還流異常症(上大静脈還流型)に対するdouble decker手術:従来術式では体および肺静脈還流路狭窄や上室性不整脈が問題となる。本術式では右心耳稜線のみを切開し、上大静脈上壁に被せるように吻合し、体静脈還流路を作成。近位上大静脈上壁は体および肺静脈還流路の隔壁として共有される。右心耳が小さい症例を除き補填物は不要である。 補填物を最小限に留めることは成長の観点から重要である。遠隔期合併症を可及的に回避するためには流体力学的にも理想的な形態再建が肝要である。今回報告した全ての術式はいずれも理想的な形態ならびに血行動態を認め、良好な遠隔成績が得られた。