第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム6(II-S06)
現在の術式の問題点

2018年7月6日(金) 08:40 〜 10:10 第1会場 (メインホール)

座長:笠原 真悟(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 心臓血管外科)
座長:佐々木 孝(日本医科大学付属病院 心臓血管外科)

[II-S06-04] TAPVCに対するsutureless repair導入後に残された課題

松久 弘典1, 大嶋 義博1, 日隈 智憲1, 岩城 隆馬1, 村上 優1, 田中 敏克2, 城戸 佐知子2 (1.兵庫県立こども病院 心臓血管外科, 2.兵庫県立こども病院 循環器科)

キーワード:総肺静脈還流異常, 肺静脈狭窄, sutureless repair

【緒言】TAPVCに対するsutureless repair (SR)は無脾症候群の予後を劇的に改善し、その適応は二心室症例にも普及しつつある。報告によってはSRは万能で、術後PVSとは無縁のように述べられているが、SR後のPVSは存在する。【方法】1996年以降のTAPVC 105例を対象とし、A期(~2004年、SR導入前、BVH:28、SVH:6)、B期(2005~2010年、SR導入を含めた移行期、BVH:14、SVH:8)、C期(2011年~、術前CTも含めた現治療方針、BVH:28、SVH:21)の3群に分け、予後、術後PVS発生を検討する。また、当院にて克服できた点、現時点で残る解剖学的問題点につき報告する。【結果】<BVH>術後3年生存はA期:64%、B期:79%、C期:96%と改善(p=0.01)、3年PVS回避生存はA期:57%、B期:56%、C期:82% (p=0.13)。B期にCS還流型術後のPVSを経験し、右側SR+IAS前方転位を導入し、左上PV-無名静脈還流を伴う場合はstaged repairとし、本方針でのPVS発生なし。しかし右上PV-SVC還流+IIbのmixed typeの2例(1例はLSVCを合併)で共に右上PV還流遺残による右心系の拡大、圧排からPVSを発症。<SVH>術後3年生存はA期:0%、B期:38%、C期:75% (p=0.0002)。3年PVS回避生存はA期:0%、B期:25%、C期:44% (p=0.001)と共に改善。C期の術後PVS発症は6例(過度の切開に起因: 2、CPV分枝共に狭小: 2、拡大心、食道による圧排:2)。後縦隔内成分を有さないmixed typeにPV-心膜吻合を行い良好に開存。【結語】TAPVCに残る問題点は<1>SR時に切開可能な肺静脈分枝径の指標がない。<2>LSVCへの対応(BVH)。<3>staged repairせざるを得ないmixed typeに対する介入時期を含めた治療方針の確立である。