[II-S06-05] Aortic translocation法の構造的利点と冠動脈移植における問題点
キーワード:aortic translocation, 完全大血管転位, 冠動脈
【目的】Aortic translocation法の構造的利点を明らかにし、冠動脈移植の際に問題が起こりうる原因と解決法を考察する。【方法】2012年以降で完全大血管転位症(III型、4例)又はDORV/PS(1例)に対してAortic translocation法を行った5例が対象。当院ではAortic translocation法として左右冠動脈を切離した後、大動脈弁グラフトを180°回転させて肺動脈弁輪に縫着し、冠動脈を再縫着している。手術時年齢1.6±0.7歳、体重10.1±1.2kgであった。【結果】手術・遠隔期死亡はなし。術前カテーテルで肺動脈弁輪9.9±2.4mm、大動脈弁輪15.2±2.1mm、VSD11.1±3.0mmであった。Rastelli手術を行ったと仮定した場合のVSDパッチ縫着面となるVSD下縁-大動脈弁前面間(VSD-Ao)の距離は32.1±8.7mmで、このVSD-Ao面と冠状断面との角度(LVOT角度)は45.9±13.9°であった。術後4か月のカテーテルでVSD-Ao距離は17.5±6.8mmと短く、LVOT角度も6.5±10.7°と著明に小さくなっていた。また5例中2例で冠動脈移植の際、冠動脈採取部と適切な移植位置が異なり、大動脈壁パッチにて移植部位の修正を行った。うち1例は元々右冠動脈が高位で、左冠動脈は交連部に近く、左右冠動脈の位置に相違があった。術前の大動脈弁輪-肺動脈弁輪間の高低差は4.2±1.7mmであったが、その程度と移植部位修正の有無との間に関連はなかった。【考察と結語】術後LVOT角度は全例良好で、仮想Rastelli手術と比べ直線的な左室流出路が形成されていた。この術式の問題点として、バルサルバ洞における左右冠動脈の位置が異なると180°回転の後、冠動脈採取部に対する縫着部位修正の必要が生じうる。またsubaortic conusによる大動脈弁輪-肺動脈弁輪間の高低差が存在するため、その程度と明らかな関連はなかったものの、後方転位後に冠動脈採取部が低位となり、大動脈壁パッチ等による冠動脈縫着部位の上方修正を行う必要が生じうると考えられた。