[II-S07-02] 先天性心疾患の心臓移植の現状
Keywords:先天性心疾患, 重症心不全, 心臓移植
心臓移植レシピエントの中で先天性心疾患(CHD)患者の占める割合は、成人では3%に過ぎないが、北米では、小児心臓移植の約4割に上る。CHDに対する心臓移植は、外科的介入が困難な小児症例と、術後遠隔期の重症心不全(体心室右室症例等)、Fontan循環不全に大きく分けられる。成人例では、移植登録時のstatusが低い症例が多く待期期間が長い傾向にある。また、国内の心臓移植症例のほとんどは補助人工心臓(VAD)使用中であるが、CHDに対するVADの経験は世界的にも少なく、その多くは体心室右室に対する補助である。他の心疾患に比して移植登録時のstatusは低いが、VAD導入時のINTERMACS profileは1-2の症例が多く、重症例が多い。CHD心臓移植の共通の特徴としては、多くの場合は開胸術後であること、輸血歴があること(感作症例が多い)で、移植手術時に癒着と側副血管のために出血のリスクが高く、形態的な問題で手術手技が煩雑であり、そのため虚血時間が長くなりやすい。これらの理由で周術期の死亡率が15%-30%と高く、小児期の心臓移植の予後不良因子としてCHDであること、輸血歴があることが挙げられている。特にFontan術後症例では、高い中心静脈圧に長期にさらされているために肝機能低下、凝固系に異常がある症例も多く、更に出血のリスクが高くなる。また、チアノーゼ性腎症、蛋白漏出性胃腸症等の合併症がある場合も多く、術後の免疫抑制にも影響がある。羸痩例では創傷治癒遅をきたしやすい。しかし、術後1年生存者の遠隔期成績を見ると、他の心疾患と予後の差はない。比較的若い症例が多いこと、心臓関連以外の合併症が少ないことが要因と考えられる。成人CHD患者の増加に伴い、CHDに対するVADや移植は増加することが予想されており、CHDに特化した適応基準、リスク分析を行い経験を積んでいく必要がある。