[II-S07-05] 先天性心疾患重症心不全に対する心臓移植の適応基準の見直し
キーワード:心臓移植, 重症心不全, 単心室
我が国の心臓移植件数は緩徐、かつ確実に増加しており、2017年は年間56件の心臓移植手術が行われて通算移植手術数は373件に到達したが、先天性心疾患症例は通算2件のみである。一方、心臓移植待機者数は手術数を上回る増加を示しており、2018年5月31日時点で684名が待機し、平均待期期間は移植待機ステータス1で1000日を超えて尚延長傾向である。ステータス2で移植手術に到達した症例は1件のみである。米国では待機登録者の10%前後、レシピエントの9%前後が先天性心疾患患者である。日本循環器学会心臓移植適応検討小委員会は自施設判定症例も含めて年間150件以上の新規評価症例に対応しており、そのうち先天性心疾患症例は少しずつ増加している印象があるものの、直近半年の新規申請は4件に過ぎない。いずれもステータス1で長期に移植を待機することが可能な二心室血行動態の患者であり、単心室血行動態の患者は含まれていない。単心室血行動態で心不全、蛋白漏出性腸症PLEなどを発症して生命予後不良と判定されるような患者にとって、心臓移植待機が現実的な治療選択肢となり得ない状況にあることが背景にあることは明白である。我が国に比して待期期間が非常に短い米国においては、PLEを発症した単心室血行動態の患者でも移植手術に到達することが可能であるが、このような患者は待機中死亡リスクが高いことが知られているため、例外事項を設けて待機ステータスを変更する処置が加えられている。同じシステムを我が国にそのまま持ち込むことは難しいが、心臓移植でしか救命できない患者に対する治療機会のバランスを考慮し、移植医療を取り巻く状況の変化に応じて適宜システム調整を検討できるよう準備する必要がある。先天性心疾患重症心不全に対する心臓移植の適応基準について、文献的考察を加えながら検討課題を整理し、当学会からの要望提出を宿題としたい。