第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム7(II-S07)
先天性心疾患における重症心不全治療

2018年7月6日(金) 10:30 〜 12:00 第1会場 (メインホール)

座長:市川 肇(国立循環器病研究センター 小児心臓外科)
座長:小垣 滋豊(大阪急性期・総合医療センター 小児科)

[II-S07-06] 心臓移植医療における心理社会的支援の重要性と意義

田村 まどか (国立循環器病研究センター 移植医療部)

キーワード:チャイルド・ライフ・スペシャリスト, 小児心臓移植医療, 心理社会的サポート

日本国内の心臓移植医療は、近年、小児用体外式補助人工心臓の国内における承認や、学童期以降の体格が大きな小児患者への埋め込み型補助人工心臓装着などより、心臓移植待機中の患者の状態も多様化してきており、移植待機期間中の子どもとその家族への心理社会的支援の提供は重要であるといえる。さらに、移植後も服薬や生活上の制限、通院や入院など、医療環境とは切っても切れない生活を送る子どもや家族への支援は継続的に行われるべきである。Child Life Specialist (CLS)は、医療環境下にある子どもや家族に、心理社会的支援を提供する専門職である。子どもの特徴やニーズに適した遊びの提供や、処置や検査、手術へ臨むためのプリパレーションの提供、処置・検査中の心理的サポートやコーピング・サポート、きょうだい支援やグリーフ・サポートなど、CLSの支援は多岐にわたるが、その一つ一つを患児一人一人へのアセスメントに基づいて行っている。それらの介入を通してCLSは、心臓移植待機という、見通しがなかなか立たない時間の流れの中で、そして、それを乗り越え踏み出した移植後の生活の中で、子どもや家族が抱いている不安や恐怖、混乱、葛藤、喪失、受容や希望といった思いを受け止め、主体性を保ち、尊重し、時には代弁しながら、子ども・家族中心医療(Patient and Family-Centered Care)の理念のもと活動し、子どもと家族が医療と向き合い、乗り越えることができるよう支援に取り組んでいる。このような心理社会的支援を、心臓移植待機中、そして心臓移植後も継続的、包括的に行うためには、それに関わる多職種が、それぞれの専門性を理解し共有、協働することは不可欠である。本発表では、CLSによる移植待機中から移植後に至る入院中や外来など、さまざまな場面での心理社会的支援について、CLSの役割や視点、多職種との協働について紹介しながら、その重要性や意義について言及したい。