[II-S09-02] 肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)小児特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症
キーワード:ガイドライン, 日本循環器学会, 肺動脈性肺高血圧
小児の肺高血圧症ガイドライン作成において根拠となるエビデンスは不足しており、小児の特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症(IPAH/HPAH)の診断・治療に関する事項は専門家の意見の合意または小規模ないし後ろ向き研究が基になっており、エビデンスレベルは高くない(ほとんどがレベルC)。診断方法は成人とほぼ同様で確定診断には心カテ検査がgold standardであるが、幼少児では年長児や成人に比べ、心カテ検査に起因する重篤な合併症の頻度が高いため、慎重な対応を要する。特にWHO機能分類IVの幼少児は高リスクであり、心エコー等でIPAHと暫定診断がつけば特異的PAH治療薬を用いた積極的な治療介入を優先させ、心カテは病状の安定化が得られるまで保留とすることも考慮する。治療においても成人の治療アルゴリズムを基に作成されており、内容に大差はない。小児では各特異的PAH治療薬の推奨度はクラスIでもエビデンスレベルはBまたはCと高くない。わが国では小児適応が取得されていない薬剤が多いが、各薬剤の特性や国内外での小児領域における知見を参考にしながら日常診療で投与され、予後改善に大きく寄与しているのが実情である。最近では日本も国際共同臨床試験への参加、国内での小児臨床試験も実施されるようになり、今後は小児への適応拡大が進むと期待される。わが国ではプロスタグランジン誘導体製剤ベラプロストが軽症例を中心に投与される機会が多く、一定の効果が得られているが、エビデンスレベルは高くない。シルデナフィルは肺血管選択性に優れ、利便性が高い薬剤であるが、高用量(>3 mg/kg/日)では潜在的な死亡リスク増加の可能性が報告され、薬用量には注意すべきである。静注プロスタサイクリン製剤を含む最大限の内科治療に抵抗性を示す症例では肺移植を考慮する。時期を逸することなく肺移植実施施設への照会が望まれるが、わが国では年少児での肺移植の機会は少ない。