[II-S09-03] 肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)小児先天性心疾患に伴う肺高血圧症
キーワード:Eisenmenger症候群, 急性血管反応性試験, 小児肺高血圧性血管疾患
先天性心疾患に伴う肺高血圧PHは、第1群のCHD-PAH以外に2群や5群にも分布しており、そのほか1群亜型や3群の病態も合併しうる。末梢性肺動脈狭窄をPH、右肺動脈大動脈起始、肺静脈狭窄や三心房心などをIPAHとする誤診に注意する。 第1群のEisenmenger症候群は、1958年に臨床的な症候に基づき定義され、肺循環の血行動態や肺小動脈病変に基づく定義では無いこと、現在は標的治療薬が利用できることで、その認識が過去と現在で解離し鑑別を難しくしている。基礎心疾患だけでなく、患児の年齢、既往歴、染色体異常や奇形症候群の有無など、個々の症例で包括的な評価を行う必要がある。静的評価のみでなく、急性血管反応性試験AVT(SitbonやBurstの基準以外に2016年に欧州のPVD Networkから新提案)やシャント閉塞試験、運動やハンドグリップによる負荷試験、そして標的治療薬試用で有効性をみる治療的診断などの動的評価や、肺生検による肺小動脈病理所見の把握は重要と考えられる。 第3群ではout of proportion PHという呼称は廃止され、肺血管病変の有無と相関する指標としてdiastolic pulmonary pressure gradient (DPG)を用いた分類が推奨された。 右心バイパス手術後の肺小動脈病変はPAHの初期像が認められることから、小児肺高血圧性血管疾患PPHVDの1つとして捉えられ、その定義はmPAP値に関係なく、肺循環駆動圧に相当するtranspulmonary pressure gradient (TPG) > 6mmHgまたは肺血管抵抗係数PVRi > 3WU・m2とされ、最近では標的治療薬の有効性に関する報告も増えている。 近々報告される予定の世界的レジストリ研究COMPERA-KIDSの結果から、CHD-PAHに対する標的治療薬の効果が明らかになることが期待される。