第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム9(II-S09)
肺高血圧ガイドラインの解読と今後の課題

2018年7月6日(金) 08:40 〜 10:10 第4会場 (303)

座長:土井 庄三郎(東京医科歯科大学大学院 小児周産期地域医療学)
座長:中山 智孝(東邦大学医療センター大森病院 小児科)

[II-S09-04] 肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)新生児遷延性肺高血圧症

小垣 滋豊1, 2 (1.大阪急性期・総合医療センター, 2.大阪大学大学院医学系研究科)

キーワード:肺高血圧, ガイドライン, 新生児遷延性肺高血圧

新生児遷延性肺高血圧(PPHN:persistent pulmonary hypertension of the newborn)は、出生後の肺血管抵抗の低下が阻害され、生理的な新生児循環が確立せず肺高血圧と低酸素血症が遷延する病態である。遷延性前期破水、羊水過少、新生児仮死、肺実質疾患、感染症などが発症の危険因子である。2018年のニース会議では、肺高血圧症臨床分類の中で、第1” 群から再び第1群の他の病因と同列扱いに戻すことが提唱された。治療の基本は、PPHN増悪要因の是正と適切な呼吸循環管理であり、低酸素血症の改善が目標となる。特異的肺血管拡張療法として吸入NO療法の有用性がエビデンスレベル、推奨クラスともに最も高い。他の特異的肺高血圧治療薬については、エビデンスレベルが低いのが現状である。今回改訂されたPPHN領域のガイドラインは、前回の2012年改訂版の内容と大きな骨子に変わりはないが、2015~2016年に相次いで発表された米国AHA/ATSのガイドライン、欧州Pediatric Pulmonary Vascular Disease Networkのガイドラインの内容を取り入れ、2017年までの論文情報を追加して日本の事情も考慮した形になっている。PPHN に対する各治療法の長期予後への影響はまだ不明な点が多く、今後新たな治療法も含めて、前向き比較臨床試験への取り組みが課題である。