[II-S11-01] 循環器内科教室における「基礎研究から臨床応用」の経験
Keywords:動脈硬化, カテーテルインターベンション, 再狭窄
私が循環器内科を志望した契機は、研修医時代にショックを伴う重症心筋梗塞症例を担当したことでした。ほぼ一週間病院に泊まりこみ、ありとあらゆる手をつくし救命に成功しました。元気に退院させることができ、30年後の現在もお元気で通院しておられます。急性期治療の如何によって予後が大きく左右される循環器内科、特に虚血性心疾患治療にやりがいを感じました。その当時広まりつつありました血管形成術を習得するべく日夜奮闘いたしました。当時は、研究というものには殆ど興味がなく臨床のみに意義を感じていました。 デバイスの改良とともに血管形成術の短期的な成績は向上していきましたが、長期的には再狭窄という最大の問題に直面しました。何度治療しても数ヶ月で再発し、結局バイパス手術によって全治された症例を経験し、再狭窄の原因究明や新規治療法の開発が必要であることを痛感しました。この領域の最前線にあったタフツ大学に留学する機会に恵まれ、血管生物学研究を始めることができました。帰国後も日常臨床の傍ら、ベッドサイドで抱く疑問点や問題点をテーマにして、動脈硬化、再生医療、心筋リモデリングなどに関する研究を行って参りました。 私はこのように、循環器内科学を専門としたことを非常によかったと感じております。日常臨床ばかりでなく、基礎研究を行い、新しい診断技術と治療法の開発に日々エキサイトしています。また、自分の発表した論文が世界の多くの人に引用されたり、大きな学会で取り上げられたり、各国から招待されるなど大変意義深い充実した毎日を送ってきました。 本シンポジウムでは、循環器内科学に没頭してきた私の経験を紹介して、臨床教室で行う基礎研究の重要性をお伝えできれば幸いです。