第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム11(II-S11)
小児循環器疾患の基礎研究から臨床への応用

2018年7月6日(金) 15:00 〜 16:30 第5会場 (304)

座長:山岸 敬幸(慶應義塾大学医学部 小児科)
座長:横山 詩子(横浜市立大学医学部 循環制御医学)

[II-S11-02] 組織再生を応用した小児循環器疾患治療に対する新たな治療へのアプローチ

上野 高義, 平 将生, 木戸 高志, 金谷 知潤, 奥田 直樹, 渡邉 卓次, 荒木 幹太, 宮川 繁, 戸田 宏一, 倉谷 徹, 澤 芳樹 (大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科)

キーワード:トランスレーショナルリサーチ, 新鮮ヒト脱細胞化肺動脈弁, 筋芽細胞シート

小児循環器疾患治療の目覚ましい発展により、多くの疾患にて長期遠隔期成績が議論されるようになった。その中で、遺残病変へのアプローチの重要性および問題点が明らかになり、若年での再治療介入が必要であるがゆえに既存のdeviceでは耐久性や成長の観点から満足できるものはなく新たなdeviceの開発が望まれる。さらに、心筋そのものが障害を受けている疾患群に対する効果的な治療法は未だ開発されていない。それら問題点を解決するために、我々は組織再生に視点を置いた治療法を開発するためにトランスレーショナルリサーチを行っており、その研究につき報告する。まず、新しいデバイスとして、新鮮脱細胞化肺動脈弁(DPV)が移植後再細胞化する可能性に注目し実験的検討を行った。新鮮ヒト肺動脈弁を脱細胞し、ミニブタに対しPVRを行い、6か月後のDPVの検討を行った。組織学的に弁尖および肺動脈内側が血管内皮細胞により内膜化し、吻合部には線維芽細胞の再播種を認め、さらにサイトカインおよび細胞外マトリックスの産生が認められた。その結果及びEUでの臨床成績をもとに、現在までに6例のTF術後症例に対しDPVを移植し、最長3年の経過で良好な成績を収めている。また、重症心不全に対する再生医療として、筋芽細胞より得られた自己筋芽細胞シートが心筋症に効果があることを基礎研究で証明し、2004年にVADを装着した成人症例に移植、2例のVAD離脱を行いえた。それ以降の成人の実績をもとに2014年に12歳のDCM患者に筋芽細胞シート移植を行い、現在ハートシートの小児DCMへの適応拡大を目的として治験を3症例に行い経過観察中である。(まとめ)組織再生に着眼した小児循環器疾患のトランスレーショナルリサーチを紹介した。小児領域はFontan循環に代表される未だ解決されていない問題も多く、さらなる治療成績向上のために、新たな視点によるリサーチが渇望される。