The 54th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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シンポジウム

シンポジウム11(II-S11)
小児循環器疾患の基礎研究から臨床への応用

Fri. Jul 6, 2018 3:00 PM - 4:30 PM 第5会場 (304)

座長:山岸 敬幸(慶應義塾大学医学部 小児科)
座長:横山 詩子(横浜市立大学医学部 循環制御医学)

[II-S11-03] 新規PAH治療標的開発に向けた肺トランスクリプトーム解析の利用

澤田 博文1,2, 三谷 義英1, 大下 裕法1,4, 篠原 務4, Kabwe Jane C.2, 淀谷 典子1, 大橋 啓之1, 西村 有平3, 丸山 一男2, 平山 雅浩1 (1.三重大学医学部医学系研究科 小児科学, 2.三重大学医学部医学系研究科 麻酔集中治療学, 3.三重大学医学部医学系研究科 統合薬理学, 4.名古屋市立大学医学部 小児科学)

Keywords:肺高血圧, 遺伝子発現, 基礎研究

【背景】現行の肺動脈性肺高血圧(PAH)治療薬は、臨床的な有益性が示されるが、治癒寛解の導入が可能な治療法ではない。マイクロアレイや次世代シークエンサー技術が進歩し、包括的遺伝子発現解析(トランスクリプトーム解析)により、従来の概念に捉われず、疾患に関する仮説を立てることが可能となり、新たな治療開発への活用が期待される。【目的】PAH血管病変の新たな治療標的候補を同定する。【方法】 公的データベースおよび動物モデルの遺伝子発現データを用い、 <1>ヒトPAHと動物モデルの検討:ヒトPAH、Sugen/Hypoxiaモデル(SU/Hx)、Fra-2発現マウスモデル、住血吸虫感染マウスモデルにおいて正常コントロールに比して共通して発現が変化する遺伝子(Differentially Expressed Gene:DEG)<2>新生内膜形成機序の検討:慢性低酸素(CHx)とSugen/Hypoxiaモデル(SU/Hx)におけるDEG、<3>薬剤耐性に関わる機序の検討:SU/HxにPAH治療薬投与を行い病初期と後期のDEG、を解析した。候補遺伝子は、加重遺伝子共発現ネットワーク解析と動物モデルを用い、その機能を検討した。【結果】<1>ヒトPAHと動物モデルでの解析では、同定された4個の共通DEGのうち、CCDC80はエンドセリン1やCol1Aの発現と関連し、SU/Hxの病変血管で発現を認めた。<2>また、Su/HxとCHxの比較では、Su/Hxで上昇する細胞接着分子Aを同定した。<3>Su/Hx早期後期に上昇し、治療耐性に関わる炎症関連分子Bを同定した。【結語】トランスクリプトーム解析により、肺血管病変形成との関連が推定される新規候補分子が同定された。候補遺伝子のin vitro、in vivoでの機能解析を行い、新たな治療の開発に繋げていくことが課題である。