[II-S11-03] 新規PAH治療標的開発に向けた肺トランスクリプトーム解析の利用
キーワード:肺高血圧, 遺伝子発現, 基礎研究
【背景】現行の肺動脈性肺高血圧(PAH)治療薬は、臨床的な有益性が示されるが、治癒寛解の導入が可能な治療法ではない。マイクロアレイや次世代シークエンサー技術が進歩し、包括的遺伝子発現解析(トランスクリプトーム解析)により、従来の概念に捉われず、疾患に関する仮説を立てることが可能となり、新たな治療開発への活用が期待される。【目的】PAH血管病変の新たな治療標的候補を同定する。【方法】 公的データベースおよび動物モデルの遺伝子発現データを用い、 <1>ヒトPAHと動物モデルの検討:ヒトPAH、Sugen/Hypoxiaモデル(SU/Hx)、Fra-2発現マウスモデル、住血吸虫感染マウスモデルにおいて正常コントロールに比して共通して発現が変化する遺伝子(Differentially Expressed Gene:DEG)<2>新生内膜形成機序の検討:慢性低酸素(CHx)とSugen/Hypoxiaモデル(SU/Hx)におけるDEG、<3>薬剤耐性に関わる機序の検討:SU/HxにPAH治療薬投与を行い病初期と後期のDEG、を解析した。候補遺伝子は、加重遺伝子共発現ネットワーク解析と動物モデルを用い、その機能を検討した。【結果】<1>ヒトPAHと動物モデルでの解析では、同定された4個の共通DEGのうち、CCDC80はエンドセリン1やCol1Aの発現と関連し、SU/Hxの病変血管で発現を認めた。<2>また、Su/HxとCHxの比較では、Su/Hxで上昇する細胞接着分子Aを同定した。<3>Su/Hx早期後期に上昇し、治療耐性に関わる炎症関連分子Bを同定した。【結語】トランスクリプトーム解析により、肺血管病変形成との関連が推定される新規候補分子が同定された。候補遺伝子のin vitro、in vivoでの機能解析を行い、新たな治療の開発に繋げていくことが課題である。