第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム11(II-S11)
小児循環器疾患の基礎研究から臨床への応用

2018年7月6日(金) 15:00 〜 16:30 第5会場 (304)

座長:山岸 敬幸(慶應義塾大学医学部 小児科)
座長:横山 詩子(横浜市立大学医学部 循環制御医学)

[II-S11-04] 動脈管閉鎖における内皮機能の役割

齋藤 純一1, 横山 詩子1, 益田 宗孝2, 麻生 俊英3, 石川 義弘1 (1.横浜市立大学医学部 循環制御医学, 2.横浜市立大学医学部 外科治療学, 3.神奈川県立こども医療センター 心臓血管外科)

キーワード:動脈管, 内皮細胞, 組織型プラスミノーゲン活性化因子

動脈管が生後に閉鎖するためには、胎児期から始まる内膜肥厚形成が必要である。動脈管の内膜肥厚形成には、内弾性板の断裂、細胞外基質の増加、平滑筋細胞の増殖と遊走など多くの現象が複合的に関与している。これまで我々は、動脈管の内膜肥厚形成に関して、平滑筋細胞の重要性について報告してきた。今回、動脈管閉鎖における内皮細胞の役割について、その一端を明らかにしたので紹介する。はじめに、胎仔ラットの動脈管と大動脈の内皮細胞の遺伝子発現を比較したところ、組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)が動脈管の内皮細胞に高発現していた(2.7-fold, n=6, p<0.01)。蛍光免疫組織染色では、未熟仔(胎生19日)の段階からt-PAが動脈管の内皮細胞で高発現していた。t-PAはプラスミノーゲンをプラスミンに変換し、プラスミンがタンパク分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を活性化させる。そこで、胎仔ラットの動脈管と大動脈の内皮細胞をプラスミノーゲン存在下で培養したところ、動脈管の内皮細胞で高いMMP-2活性を認めた(7.3-fold, n=6, p<0.05)。in situゼラチンザイモグラフィーでは、動脈管の内弾性板で高いMMP活性を認めた。また、三次元の血管モデルを作製したところ、プラスミノーゲン存在下で、t-PAがMMP活性化を介して、内弾性板を断裂させた。胎生19日のラットへプラスミノーゲンを投与したところ、MMP活性、内弾性板断裂、内膜肥厚形成が増強した。さらに、ヒトの動脈管でも、ラットと同様に、内膜肥厚部でのt-PA発現、MMP活性が確認できた。動脈管の内皮細胞で高発現するt-PAはMMP-2を活性化し、内弾性板を断裂させることで、動脈管の内膜肥厚形成を促進していると考えられた。