[II-S11-05] 家族性大動脈弁上狭窄において、遺伝子内微小欠失の頻度は高い:次世代シーケンサーによる7家系の解析と臨床応用への可能性
キーワード:大動脈弁上狭窄, 次世代シーケンサー, 遺伝子
【背景】大動脈弁上狭窄(SVAS; Supavalvular Aortic Stenosis)は先天性心疾患の一つで約25,000出生に1人が発症する。SVASはWilliams症候群に合併することが有名であるが、非症候群の孤発性または常染色体優性の症例も存在する。これらの非症候群性SVASの原因としてELN遺伝子が報告されているが、約半数の患者ではELN遺伝子に病的変異が同定されていない。【目的】SVAS患者の遺伝的病因を明らかにすること。【対象と方法】非症候群で常染色体優性遺伝の家族性SVAS7家系において、次世代シーケンサーを用いた全エクソーム解析(WES; Whole Exome Sequencing)を実施した。本研究は名古屋大学医学部生命倫理審査委員会の承認を得て行った。【結果】3家系においてWES法でELN遺伝子に新規の病原性の強い変異を認め、Sanger法で家系内Co-segregationを確認した。別の3家系においてWES法でELN遺伝子内にエクソン単位の欠失が疑われ、Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification (MLPA)法で家系内Co-segregationも含めて欠失を確認した。残る1家系では明らかな原因遺伝子は同定されなかった。【結論】家族性 SVASにおいて、ELN遺伝子の新規変異を同定するとともに、約半数にELN遺伝子内欠失が関与していることを示した。家族性SVASの遺伝子診断においては、変異検索に加えて、MLPAなどの遺伝子内欠失を検出できる手法の併用で感度を上げることが可能であり、この知見は今後のPhenotype/Genotype解析や遺伝カウンセリングなど臨床上も有用と考えられた。本研究を含めて、小児循環器領域における次世代シーケンサーの応用に対する我々の取り組みを紹介する。