[II-TR01-04] 16歳以上の先天性心疾患患者のセルフケア能力とQOLの検討
キーワード:成人先天性心疾患, QOL, セルフケア能力
【背景】重症チアノーゼ型の先天性心疾患(Congenital Heart Disease,CHD)を除き,修復術後CHD患者のQOLは,健常者と大差がないと言われている。しかし,遺残症や続発症を伴う患者では,疾患管理のセルフケア能力を身につけなければ,加齢に伴う病態の変化でQOL低下の可能性がある。【目的】16歳以上のCHD患者のセルフケア能力とQOLを明らかにし,必要なケアを検討する。【方法】2017年2月~10月にA病院小児科外来を受診した16歳以上のCHD患者135名(16~51歳,24.9±8.0歳,男性57名)に質問紙調査を実施,127名から回収した(有効回答率:94.1%)。質問内容は「疾患や治療の不安」「就学・就職の不安」「結婚・妊娠の不安」「疾患に対するセルフケア能力」「QOL」であり,CHD重症度分類を用いて「軽症」「中等症」「重症」に患者を分類した。【結果】回答者127名の年齢は,24.6±7.8歳,男性53名(41.7%),疾患は軽症30名(23.6%),中等症42名(33.1%),重症55名(43.3%)であった。重症度別でセルフケア能力やQOLに有意差はなかった。しかし,疾患や治療に不安を抱いている10代の患者は「心の健康」(p=0.049),20代では「心の健康」(p=0.039),「日常役割機能(精神)」(p=0.008)でQOLが有意に低下していた。【考察】セルフケア能力やQOLが重症度別で差がなかったのは,CHD重症度にセルフケア能力やQOLが関連しているのではなく個々の治療状況で病状に違いがあるためと考えた。しかし,不安の因子が加わると若年CHD患者では,精神面のQOL低下が明らかになった。精神的ケアだけでなく,疾患関連情報を必要に応じて得られるシステム(相談窓口など)を作ることは,これらのCHD患者のセルフケア能力やQOLの向上に役立つのではないかと考える。【結論】疾患や治療に不安を抱いている若年CHD患者は,心の健康や日常役割機能(精神)のQOLが低下していた。QOLが低下し続けないためには,若年CHD患者が疾患や治療などを相談できる環境を整えていく必要がある。