[II-TR04-04] 乳児ファントムを用いた心臓診断カテーテル検査の被ばく線量評価
Keywords:乳児ファントム, 被ばく線量, 乳腺線量
【目的】フィリップス社製AlluraClarity FD 10/10は乳児から成人まで被ばく低減を期待できる装置である。当装置での乳児心臓診断カテーテル検査(以下、診断カテ)の臓器線量、実効線量を乳児ファントムを用いて評価した。【方法】CIRS社製ATOM乳児相当人体ファントムの各組織・臓器に相当する位置に放射線を検出するAGC旭テクノガラス社製ガラス線量計GD-352Mを設置した。そして通常心臓診断カテーテル検査を行っている条件(透視正面、透視側面、撮影正面、撮影側面)で人体ファントムを照射した。線量計の読取値から各臓器線量、実効線量を算出した。【結果】被ばく線量の多い臓器は肺、食道、乳腺であった。正面と側面を比較すると、透視、撮影共に肺と食道の臓器線量は約10%以内の差であった。乳腺の臓器線量は透視、撮影ともに正面は側面の半分以下であった。透視の実効線量に関して正面のほうが側面よりも約16%少なかった。【考察】透視・撮影の正面はX線が患者の背中側から入射するため、腹側にある乳腺の被ばく線量は側面よりも少なくなったと考えられる。したがって、側面よりも正面を多用することにより特に乳腺の被ばく低減が可能である。側面の透視時には腹背方向の照射野を絞り、乳腺に直接X線が当たらないようにすることにより、乳腺線量を約4分の1、実効線量を約3分の2に低減することができる。簡易的に算出した乳児診断カテの平均実効線量4.0mSvは、2003年に導入された旧装置の7.7mSvよりも約45%程度低減されていた。これは当装置の被ばく低減機構による影響が大きいと考えられる。【結論】被ばく線量の多い臓器は肺、食道、乳腺であった。被ばく低減方法としては優れた被ばく低減機構をもつ装置を導入することや、可能な限り側面よりも正面を使用する、側面の透視時には腹背方向の照射野を絞るといったことがあげられる。