[II-YB04-04] 英国の外科医教育方法と現状から何を学べるか
Keywords:小児循環器外科, 修練, 若手医師育成
【背景】若手医師の指導法は、各国の歴史文化・専門領域に根ざした多様性があり、一概に優劣を決めづらい。【目的】英国での状況から日本の先天性心疾患外科医育成の為のヒントを探す。【方法】英国はこれまで、英国人のみならずEU・英連邦を中心とした国々から国籍・民族的背景の差別なく若手医師を受け入れ指導してきた。外科系については王立外科協会が教育学的手法に基づいた体系的な指導要領を示し、修練を受ける側のみならず指導者(Consultant)側にも講習の受講等を義務付けている。技術修得の判定評価は記述された項目に沿い、修練者・指導者の間で必ず双方向性に行われ、記録される。【結果】修練指導法を国内単一のプロトコールに規定することで、最低限の医療の質を担保し、均等・公平な修練機会を提供するという利点がある。双方向性の評価方式は、判断の中立性や指導法の個人差是正に寄与する。一方、言葉で表現される定型的な内容の教育に偏重した技術伝承様式は、受動的であり、標準レベルを超えて卓越した能力を育まない。近年、英国では社会的要求により修練中の小児循環器外科医が執刀することは難しく、修練段階で心内手技の経験蓄積が困難である。開閉胸手技や一般的助手業務からConsultantに要求される技術レベルまで一気に到達するための方策は現時点で存在しない。手術の安全性向上に伴い術中の困難な状況や突発的事象の頻度は極めて低くなっており、それらに対処する能力を実践的に伝授することも難しい。【考察】欧米の科学的・教育学的な指導様式の上に日本的・能動的な「言外に技を盗む」技術伝承が機能する余地がある。良いMentorを育てることも教育方式と同等に重要であろう。【結論】当該領域の後進の指導に関して、海外の状況から長所・短所を識別した上で良い部分を抽出し、日本独自の更に効果的な教育方式を探求することができると考える。