第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

教育講演

教育講演4(III-EL04)

2018年7月7日(土) 10:10 〜 11:10 第2会場 (301)

座長:新川 武史(東京女子医科大学 心臓血管外科学)

[III-EL04-01] 両大血管右室起始症の外科解剖

河田 政明 (自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児・先天性心臓血管外科)

キーワード:両大血管右室起始, 漏斗部中隔, 心室内rerouting

【定義】現在DORVは「50%ルール」に基づく「両大血管の周径のそれぞれ50%以上が右室に結合する“心室-大血管関係”」を有する疾患(群)とされる。旧来の「両側大血管下円錐筋の存在」「side-by-sideの大血管配列」が混乱の主因である。【形態】漏斗部中隔(IS)と固有心室中隔との整列不整によりVSDが生じ、流出路型が多い。僧帽弁前方にも房室弁-半月弁間の筋束(VIF)が存在する。ISの挿入(特に心室中隔側)部位が心室-大血管の結合様式・位置関係を規定し(TSM前脚・左側VIF・中心線維体・右側VIF)、Neufeldらの大動脈弁下(SA)型・両大血管下(DC)型・肺動脈弁下(SP)型VSDを伴う病型に相当する。非交通(NC)型VSDを伴う病型ではVSDは右室流入部あるいは心尖部方向に存在する。DORVでのVSDは一次室間孔(診断時)を指す場合と二次室間孔(外科的閉鎖時)を指す場合がある。ISの前方・後方偏位は長さ・厚さも関与して大動脈弁下・肺動脈弁下狭窄に関連、さらには大動脈縮窄/離断や肺動脈狭窄に関連する。心室低形成(右室・左室)や僧帽弁異常を伴う例もある。【診断】基本は心カテーテル・造影検査であるが、DORVの存在は心エコー図で心室長軸・単軸・心尖4腔断面から50%ルールにより診断する。ISの挿入・VSDの情報は単軸断面で三尖弁前-中隔交連との関係に注目する。心尖部からの右前斜位断面は心血管造影に準じた形態情報が得られる。MRIは有用な診断手段となる。冠動脈走行・流出路や大動脈系狭窄など術式選択に重要な形態についての診断も行う。【外科治療】SA・DC型VSD例ではVSD閉鎖・Fallot四徴に準じて心室内reroutingを行う。SP型(偽性Taussig-Bing心)例ではVSD-肺動脈弁のrerouting+動脈スイッチを原則とし、古典的Taussig-Bing心ではISを切除後Kawashima手術も選択される。NC型例ではFontan手術が選択される。【まとめ】DORVはVSD・心基部・大血管を中心に多様性について理解する必要がある。