[III-MIS02-03] 地方病院の現状から見た小児心臓血管外科診療の将来的展望
キーワード:地方病院, 安全管理, 施設集約
少子化問題により地方病院における小児心臓血管外科医療が転換期を迎えている.徳島県は1990年代の統計で人口83万人台,出生数約8000人であったが,2016年には人口74万6千人,出生数5346人と減少しともに全国44位であった.徳島大学病院では1980年代より小児心臓外科手術を行っているが,年間手術症例数は2014年の72例(人工心肺症例52例)をピークに年々減少している.新生児単心室心疾患を含む全ての疾患群を対象とした手術施設の中では最小規模と考えられる.この様な中で如何に安全な手術体系を構築するかが喫緊の課題であり,長期的な問題点としては減少する人口及び症例数の中で如何に無理のない診療体制を構築し今後の世代へと継承してくかである.安全な医療を提供するという点では以下の様に最大限配慮を行っている.1) 各部署において十分なカンファレンスを行い意志の統一を図る.2) 十分な術野を確保し執刀医だけでなく全スタッフが手術の進行状況について正確に把握できる様にする.3) スタッフ間のコミュニケーションを徹底し雰囲気の良い発言しやすい環境を整える.上記内容を具体化したシミュレーションシートを配布し,手術が開始する前の段階で全ての疑問点を洗い出す様にする.この様な対策を行うことで最重症疾患以外の救命率は上昇傾向にある.しかし高難度手術への対応や出生数減少の問題を含むと今後の体制は変更せざるを得ない状況に差し迫っている.推計データでは全国の出生数は2016年97.7万人から2040年には51.4万人に減少するとされている.徳島県では出生数が2800人程度まで減少することとなり,現在の診療体制は維持するのは難しい.地域の実情をある程度反映した上での必要最低症例数が確保できる施設への集約化,疾患を難度別にある程度分類し,最高難度の手術は高容量施設へと転送する体制を作成するなど,将来的な体制作りを学会主導で早期に整備,推進することが望まれる.