[III-MOR15-02] 超軟質精密心臓レプリカ作製の迅速化と低価格化を目指した紫外線硬化樹脂噴出法による3Dプリンタの開発と応用
Keywords:紫外線硬化樹脂噴出法, 心臓レプリカ, 術前シミュレーション
[背景]我々は患者のMSCTスキャン画像に基づき、精密3Dプリンタ技術である「光造形法」と新しい鋳型技術である「真空注型法」を応用して、立体構造が複雑な小児の心臓形状を内腔までリアルに再現したテイラーメイドの「心臓レプリカ」の開発を行ってきた。この心臓レプリカは、複雑な先天性心疾患患者の個別の術前シミュレーションツールや若手医師の教育ツールとして応用が可能である。しかし、本法に基づく心臓レプリカは、個別生産のために製作に最短で約4～5日間を必要とし、コストもかかることから量産化が困難な傾向にあり、医師の要請に応じていかにオンデマンドに提供できるかが課題となっていた。[対象と方法]大手精密機器メーカー及び大手樹脂開発メーカーの協力を得て、軟質臓器モデルの製作に特化した紫外線硬化樹脂噴出法による3Dプリンタの開発を行なった。15-25μmの積層と紫外線硬化を繰り返し造形を行い、ASD, VSD, ccTGA, TOFの４疾患において試験的に造形を試み、積層およびサポート剤の条件最適化を行なった。[結果]小児の心臓では、積層およびサポート剤の除去に要する時間は合計で約24時間であり、注型法を併用した際の約1/2以下、経費も約1/2で製作できる見込みが立てられた。完成したレプリカは元となる3D画像データを良好に反映し、切開縫合を伴う術前シミュレーションが可能な硬度と感触を備えていた。しかしながら、本レプリカは長期間の保存で樹脂が水分を失い徐々に硬化する傾向があることが判明し、グリセリン塗布もしくは樹脂コーティングを施すことによりこの問題点の改善を行なっている。[結論]紫外線硬化樹脂噴出法による3Dプリンタは、心臓レプリカの迅速化と低価格化を実現することが可能である。より良い術前シミュレーションが可能となるよう、今後更に樹脂と積層技術の改良を重ねる予定である。