[III-MOR16-01] ファロー四徴症術後の循環動態評価における、赤血球分布幅の有用性
Keywords:赤血球分布幅, ファロー四徴症, BNP
【背景】赤血球分布幅 (Red blood cell Distribution Width, RDW)は、心不全の評価において簡便かつ有用なマーカーであるとされる。ファロー四徴症 (TOF)では、術後の高い右室圧 (RVP)は心不全や将来的な再手術のリスクを高める。【目的】RDWが、TOF術後患者の循環動態評価において有用なマーカーとなり、更に再手術の予測因子となりうるかを検証する。【方法】2011年6月から2017年12月までの期間に当院で根治術を行ったTOF症例のうち、術後に心臓カテーテル検査を行った50例を対象に、後方視的検討を行った。入院時のRDW、BNP、心電図上でのQRS時間と併せ、心臓カテーテル検査での右室圧 (RVP)、左室圧 (LVP)、および両者の比 (RVP/LVP)、術式、遺残短絡の有無を解析した。また、姑息術としてのシャント術の既往の有無も評価し、これらの要素とRDWとの関連性を検討した。RDWについては、RDW高値群 (RDW> 14.5, n=19)とRDW正常群 (RDW<14.5, n=31)の2群に分類し、解析を行った。【結果】対象となった50例の心臓カテーテル検査時の平均月齢は17.9か月 (3- 50か月)、手術からの平均月数は11.3か月 (0- 41か月)であった。入院時のRDWは、BNPと弱い正相関を認めた (p= 0.01, r2= 0.13)。RDW高値群では、RDW正常群と比較しRVP/LVPが有意に高値であった (0.70 vs 0.44, p< 0.0001)。また、遺残短絡を認めた症例 (n= 10)では、短絡を認めない症例と比較しRDWが有意に高値であった (14.9 vs 13.7, p= 0.001)。RDW高値群においては、RDW正常群と比較し再手術率が有意に高かった ( 31.6% vs 3.2%, p< 0.0001)。一方、心電図上でのQRS時間や術式、シャント術の有無とRDWとの間には、有意な相関は認めなかった。【考察】RDWは、BNP同様TOF術後患者の循環動態を評価する有用なマーカーとなり、再手術の予測因子となりえた。日常臨床においては、RDWは通常の血算で検査可能である事から、BNPよりも簡便なマーカーとなりうる。