[III-MOR16-03] 異なる経過を辿っている冠動脈起始異常の2例
Keywords:冠動脈起始異常, 左冠動脈右冠動脈洞起始症, 右冠動脈左冠動脈洞起始症
【はじめに】冠動脈起始異常は稀な先天性疾患で、この中で冠動脈が本来の冠動脈洞から起始していないものがある。左冠動脈が右冠動脈洞から起始している場合と右冠動脈が左冠動脈洞から起始している場合とがある。無症状であれば発見されにくいが、ときに運動時の失神や突然死きたす。【症例】症例1:女児、左冠動脈右冠動脈洞起始症。11歳時から運動後の失神が2回あったが、いずれも短時間で自然に回復した。12歳時体育の授業中に失神し、近医に救急搬送された。意識は回復していたが、心電図でST-T変化が認められたために当院に搬送された。当院到着時の心電図はST-T変化は改善傾向であったが、多源性心室期外収縮が認められた。またCK上昇と左室収縮の低下がみられた。入院後には異型狭心症様の発作が出現した。心エコーで左冠動脈の起始異常が疑われ、CTで左冠動脈右冠動脈洞起始症と診断した。その後は症状の再発はなく、家族が手術を希望していないため、運動制限と内服治療で経過観察中である。症例2:男児、右冠動脈左冠動脈洞起始症。4か月時に川崎病に罹患し、左右に最大6mmの冠動脈瘤を形成した。7か月時の心臓カテーテル検査の際に右冠動脈の起始異常に気付かれ、4歳時のCTで右冠動脈左冠動脈洞起始症と確定した。冠動脈瘤は消退傾向にあるが、現在も抗血小板薬の内服を継続している。失神などの症状はみられていない。【まとめ】1例は症状のため、1例は無症状で偶然の機会に発見された。AEDの普及により蘇生後に診断される症例が増加する可能性がある。左右を比較した場合に左冠動脈の異常のほうが症状が出現しやすいとされるが、全例で症状が出現するわけではなく無症状例も多い。また手術の術式は種々報告されているが決まった方法はなく、無症状例の手術適応の判断は難しい。症例の蓄積が必要である。