[III-MOR16-04] 左室収縮不全を呈した縮窄を伴う第5大動脈弓遺残の5か月児例
Keywords:第5大動脈弓遺残, 大動脈縮窄, 心不全
【はじめに】第5大動脈弓遺残(Persistent Fifth Aortic Arch: PFAA) は、本来胎生期早期に消失する第 5 大動脈弓が遺残したもので、同部位の狭窄と第4大動脈弓の離断を伴うと大動脈縮窄と同様の血行動態を呈する。【症例】生後5か月の男児。【現病歴】在胎38週、2796g、経膣分娩で出生し、健診では体格が小さめであること以外に異常は指摘されなかった。かかりつけ医で鉄欠乏性貧血としてフォローされていたが、心雑音がよく聴取されるようになったため精査目的で外来紹介された。【現症】身長-1.8SD 、体重-2.2SD、軽度の多呼吸、陥没呼吸を認め、胸骨右縁上部にL3/6の収縮期駆出性雑音、胸骨左縁下部にL2/6の収縮期逆流性雑音を聴取した。【検査所見】胸部レントゲンにて心胸郭比67%、心電図では著明な左室肥大、心エコー検査では大動脈弓は通常より低位に位置し、主要3分枝が1本で起始しており、最狭窄部径3mmの大動脈縮窄を認めた。LVEDd 185%、LVEF 39%と左室拡大と収縮低下、severe MRを認めた。造影CTにて第4大動脈弓の離断ならびに第5大動脈弓の縮窄と診断した。【臨床経過】同日に大動脈弓拡大再建術を施行し、術後徐々に左室収縮は改善し、MRも軽減した。術後約2ヶ月で吻合部の再狭窄を来たし、経皮的バルーン大動脈拡大術にて圧較差は22mmHgから0に改善した。術後約2年半が経過したが再狭窄は認めず、LVEDd 104%、LVEF 78%、mild MRで心機能も良好である。【考察】PFAAは1969年にVan Praaghらにより初めて報告された非常に稀な先天性血管異常で、大動脈縮窄や離断の合併頻度が高い。その血行動態から新生児期から乳児期早期に診断される例が多いが、心不全で発症する症例があるため注意を要する。大動脈弓と分枝の形態診断には造影CTが有用であった。