[III-MOR18-01] Na-channel blockerの副作用と思われる心室頻拍を起こしたHCM症例
キーワード:肥大型心筋症, シベンゾリン, 不整脈
【緒言】肥大型心筋症(HCM)は小児の突然死の原因の多くを占める。HCMにおいてCibenzolineが血行動態の改善にも有用とされているが、副作用について小児科であまり知られていない。我々はCibenzolineを投与したHCM症例で心室頻拍(VT)により失神した症例を経験した。【症例】17歳の女児。15歳時の学校心臓検診で心電図異常を指摘され、前医よりHCM疑いにて当院へ紹介となった。本症例に失神歴はなかったが、父がHCMで心室細動(Vf)を発症して死亡していた。HCMと診断した後に、運動制限とBisoprololの内服にて治療を開始した。治療開始時BNP427pg/mlであったが、治療開始後もBNPは上昇し、Bisoprolol10mg/dayまで増量しEnaraprilも併用したが治療開始2年でBNP1000pg/ml以上となった。Cibenzolineの内服を開始したところ、BNP780pg/mlまで改善し、体が軽くなったと患者も自覚できた。しかし開始後4か月に自宅近くの路上でVfを起こし失神。幸いにも発症5分で救急隊が心肺蘇生を開始し、7分で除細動器にて正常洞調律に回復した。入院後に不整脈の2次予防として皮下埋め込み型除細動器を埋め込むための波形確認目的でレッドミル運動負荷を行った際に、早足歩行の負荷でQRS波形はnarrowからwideに変化し、直後にVTとなり失神した。負荷中の心電図変化よりCibenzolineの副作用を疑って、CibenzolineからSotalolに内服を変更し、その後は同程度の早足歩行ではwideQRSへは変化せず、VTも誘発されなかった。Na-channel blockerは心室内伝導遅延から心室不整脈が起こる可能性が指摘されており、本症例の経験を踏まえHCMに対するNa-channel blocker投与の注意点を文献的考察を加えて報告する。