[III-MOR18-04] 心筋生検のみが心外症状のないミトコンドリア心筋症の診断契機になった15歳女児例
Keywords:学童肥大型心筋症, 心筋生検, ミトコンドリア心筋症
【背景】ミトコンドリア心筋症はミトコンドリア病の一症状として認識されている事が多く、心筋症が唯一の症状である場合には見逃される事も多い。【症例】15歳、女。小1学校心臓検診心電図の左室肥大所見を契機に、近医で特発性肥大型心筋症と診断。運動制限のみで経過観察されていたが、13歳頃より軽度の胸痛を自覚するようになり、管理先移譲目的で当科紹介された。【家族歴、既往歴】家族歴なし。周産期特記事項なし。身長・体重は正常範囲内。発達正常。先天性白内障あり(眼内レンズ挿入術後)。難聴なし【現症】身体診察で異常所見は認めず、四肢筋力も異常なし。心エコーでLVDd 37.7mm(-1.7SD)、EF 79%と心収縮力低下ないが左室全周性に13~14mmの壁肥厚を認めた。高血圧や左心系狭窄病変は認めず。精査の一環の血液検査ではNT-pro BNP 2376pg/ml以外は特記事項なくミトコンドリア病の早期診断マーカーであるGDF15も基準値内だった。【考察】心筋の全周性壁肥厚を認め、二次性心筋症を疑った。二次性心筋症の鑑別疾患としては、(1)蓄積性疾患(Pompe病、Fabry病、Danon病、AMPK変異など)、(2)ミトコンドリア心筋症、(3)染色体異常(Noonan症候群、LEOPARD症候群など)、(4)膠原病、(5)HCV感染症などがある。血液検査で(1)、(4)、(5)は否定的であり、臨床所見から(3)の可能性は低い。(2)の鑑別目的に心筋生検を行なったところ、電顕でミトコンドリア異常増加、年輪状変化・封入体様変化を認めた。以上より本症例はミトコンドリア心筋症と診断した。今後、心筋における酸化的リン酸化障害の証明、原因遺伝子異常の確定、骨格筋生検などの追加検査を検討・予定している。【結論】家族歴や心外症状を伴わない学童の肥大型心筋症で、心筋生検のみがミトコンドリア心筋症の診断契機になることがある。