[III-OR30-02] 小児がん患者における化学療法誘発性心筋障害(特に右室機能)についての検討
Keywords:化学療法誘発性心筋症, 右室機能, 小児がん
【緒言】抗癌剤治療後の心毒性はがん患者の長期予後に大きく影響し、早期発見と早期介入が重要である。近年、組織ドプラ法(TDI)や2D speckle tracking法(2DSTI)を用いた心機能評価が早期の左室機能障害の把握に有用とされているが、右室機能についての報告は少ない。【目的】心毒性リスクが高い抗癌剤治療をうけた小児がん患者の右室機能について検討する。【対象と方法】対象は、抗癌剤治療終了後1年以上経過した患者(P群):43例(男:20人,女:23人,年齢平均値:13.3歳)と器質的心疾患のない対照(N群):56例(男:35人,女:21人, 年齢平均値:12.2歳)。エコー装置はGE社製S5で、右室機能の指標として三尖弁輪部収縮期移動距離(TAPSE)、右室面積変化率(RVFAC)、TDIによる右室自由壁弁輪部における拡張早期速度(e’)と収縮期速度(s波)、2DSTIによる右室長軸方向のstrain (global longitudinal strain:GLS)を用い、これら指標について両群間で比較検討した。【結果】両群間で、患者背景、左室駆出率、僧房弁口血流速度に有意差はなかったが、三尖弁口血流速度のE波とTAPSEはP群がN群と比較して有意に低値であった(E波:50.3±7.8cm/s vs 55.3±10.2cm/s、TAPSE:20.1±3.0mm vs 22.6±2.8mm、いずれもp<0.01)。RVFACは両群間に有意差はなかった(46.9±0.5% vs 48.4±0.5%、p=0.168)。e’は有意差はないもののP群が低い傾向にあった(12.2±2.2cm/s vs 13.1±2.3cm/s、p=0.057)。s波とGLSはP群がN群と比較して有意に低値であった(s波:11.5±1.7cm/s vs 13.1±1.9cm/s、GLS:-23.3±2.5% vs -25.4±2.7%、いずれもp<0.01)。【結語】抗癌剤治療後の小児がん患者では、左室に加えて右室の潜在的な心筋障害の存在も示唆された。