[III-OR30-03] ミトコンドリア病と致死性不整脈
キーワード:ミトコンドリア病, 致死性不整脈, CRT
【背景】ミトコンドリア(Mit)病合併心筋症はまれではないが、進行性伝導障害やVT/VF等の致死性不整脈が予後を規定する例の認識は不十分である。【目的】Mit病合併致死性不整脈の特徴を明らかにすること。【方法】当院でフォロー歴のあるMit病34例 (MELAS 18例(4-69歳)、MERRF 4例(23-30)、Leigh 8例(16-72)、Mit心筋症単独 3例(3-16)、KSS 1例(40))の不整脈関連事象(WPW、VT/Vf、伝導障害、不整脈関連死の有無、死亡時年齢など)を後方視的に検討する。【結果】WPW合併はMELAS 5/18、MERRF 1/4、Mit心筋症1/3、他0でMELAS1例にAVRTを生じたが非致死性であった。VTはMit心筋症1例のみに認め、1歳時にプルキンエ関連VTに対するアブレーションおよびICD植込後、3歳まで生存している。進行性伝導障害はMELASのみに合併し、死亡4例、生存1例であった。死亡時年齢は4,12,23,25歳で、全例一枝ブロックから出現し、二枝・三枝ブロックに進行した。一枝ブロック出現から死亡まで全例3年以内であった。LBBB出現時(QRS幅120-140ms)のLVEFは全例45%以上、NYHA2で、この時点から死亡まで全例1.5年以内であった。死亡4例にPMI、CRT植込例はなかった。生存1例は二枝ブロック、QRS幅130ms、LVEF 45%時点でCRT植込を施行している。【考察】2012 ACCF/AHA/HRSガイドラインでは神経筋疾患に関してPMI適応を一枝ブロックでもクラス2bとしており、死亡4例でPMI施行により結果が異なった可能性はある。しかし、CRT適応はLBBBの有無、QRS幅、NYHAに関わらずLVEF 35%以上の例を適応としておらず、Mit病に関する追加情報もないが、MELAS合併伝導障害進行の自然歴はあまりに急速である。【結語】Mit病特にMELASには致死性不整脈合併頻度が高い。本検討ではWPWは非致死性、心室頻拍はMit心筋症のみで認めた。MELAS合併伝導障害は進行が速く、ガイドライン上CRT非適応の心機能非低下例でも、予防対応を要する例がある。