第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

心筋心膜疾患

一般口演30(III-OR30)
心筋心膜疾患 2

2018年7月7日(土) 08:30 〜 09:20 第3会場 (302)

座長:塩野 淳子(茨城県立こども病院 小児循環器科)
座長:進藤 考洋(国立成育医療研究センター 循環器科)

[III-OR30-04] 若年期に急性心筋梗塞を発症した筋ジストロフィーの2例

熊本 愛子, 熊本 崇, 田代 克弥 (佐賀大学 医学部)

キーワード:筋ジストロフィー, 冠攣縮, 心筋障害

【背景】筋ジストロフィー(以下MD)は,呼吸管理の進歩により呼吸不全死が減少した結果,近年は心臓死が問題となっている.MDの心筋障害は左室下側壁から始まり,多くは拡張型心筋症に移行することが知られているが,その機序は不明である.今回左室下壁の心筋梗塞に冠攣縮の関与が考えられた若年MDの2症例を経験した.【症例 1】Becker型MD 12歳男児.8歳時,起床後に胸痛,胸部不快感を自覚し,心電図でII,III ,aVF,V5-6誘導でST上昇し紹介となった.左室下壁はhypokinesisであり,ラピチェック陽性,トロポニンT高値であり急性心筋梗塞と診断し,抗凝固療法と硝酸薬を開始した.来院時及び1ヵ月後の冠動脈造影(以下CAG)では狭窄病変は認めず,心筋シンチで左室下壁の集積の低下,MRIで同部位の遅延造影があり冠攣縮の可能性を考えた.12歳時に同様の胸痛発作と心電図変化があり,2回目の心筋梗塞を発症した.CAGでは左冠動脈は全体的に狭小化し,特に回旋枝の所見が著しく,同部の攣縮が心筋梗塞の原因と考えCa拮抗薬を開始した.【症例 2】Duchenne型MD 14歳男児.就寝時に左側腹部痛,呼吸苦,胸痛が出現した.心電図のII,III ,aVF,V5-6誘導でSTが上昇し, 左室側壁から後壁がhypokinesisであった.症例1同様ラピチェック陽性,トロポニンT高値であり,急性心筋梗塞と診断し抗凝固療法と硝酸薬投与を開始した.来院時のCAGで狭窄はなく,後日心筋シンチで下側壁の集積低下,MRIで同部位の遅延造影を認めた.回復期のアセチルコリン負荷試験で右冠動脈に攣縮を認め,冠攣縮性狭心症と診断して攣縮予防にCa拮抗薬,硝酸薬を開始した.【結語】心筋梗塞の原因として冠攣縮の関連性が示唆された若年MDの2例を経験した.MDと冠攣縮についての報告は少ない.今後MDの心筋障害に対する冠攣縮の関与を考慮すべきであり,症例によってはCa拮抗薬の早期導入はその心筋障害の抑制に有効である可能性が示唆された.