[III-OR30-05] 劇症型心筋炎急性期離脱後も炎症が遷延した慢性心筋炎に対する治療法について
キーワード:免疫抑制療法, ウイルス, 心筋生検
【背景】 劇症型心筋炎は急性期からの回復後は一般に予後良好とされるが,炎症が遷延し慢性心筋炎に移行する例もある.慢性心筋炎に対する治療法は確立していない.【症例1】 9才女児.劇症型心筋炎の診断でperipheral ECMO導入(3日間施行).急性期ステロイド投与せず.離脱後も左室拡大,収縮力低下,BNP高値が遷延.発症後2ヵ月時心カテ:LVEDV 174%N, EF 47%, 左室瘤,心内膜心筋生検EMBでは活動性炎症と線維化が混在する所見であり,慢性心筋炎と診断.ほぼ無症状でステロイド投与せず,ACEI,ARB,β遮断薬継続.発症後16ヵ月時心カテ:LVEDV 232%N, EF 33%, 左室瘤増悪,EMBでは炎症細胞浸潤なく線維化著明,ウイルスPCR陰性.【症例2】 4才男児.劇症型心筋炎の診断でperipheral ECMO導入(2日間),同日左房減圧目的で心カテ,心房中隔欠損作成しステント留置,EMBでは強いリンパ球浸潤,心筋細胞変性壊死,ウイルスPCRでCMV陽性.2日後左室内血栓ありcentral ECMO(左室脱血,2日間),LVADへ変更(5日間)後離脱.左室拡大,BNP高値遷延.発症後2ヵ月時心カテ:LVEDV 117%N, EF 39%, EMBでは置換型線維化と一部近接効果を伴うリンパ球集簇像残存,慢性心筋炎と診断.ウイルスPCR陰性を確認し,心房中隔ステント抜去の開心術前に左室機能を回復させる目的でステロイド療法開始,ACEI,β遮断薬併用.【考察】 慢性心筋炎は明らかな急性心筋炎既往がなく,DCM様慢性心不全として発症する「不顕性」と,急性心筋炎として発症し炎症が遷延,慢性化する「遷延性」に大別される.従来,前者が圧倒的に多いとされてきたが,劇症型心筋炎救命率向上により後者の増加も予想される.ウイルス陰性の慢性心筋炎に対する免疫抑制療法の有効性が報告されているが,適応や投与法など検討の余地がある.