[III-OR31-01] ほぼ無症状で発見された小児特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧の中期予後~無症状の段階からの治療の有効性
キーワード:肺動脈性肺高血圧, 早期治療, 中期予後
我が国の小児期の特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧患者には学校検診等で心不全症状がほぼない段階で発見される群が少なからず存在する。今回我々は1999年以後に当科で診断した小児特発性・遺伝性肺動脈性肺高血圧患者22例について、スクリーニング時の症状のない8例と心不全症状から診断された14例で比較検討を行った。また生存曲線のみ1999年以前に診断された無症状者5例を比較対象として解析した。 この2群間で診断時の検査で有意差を持つのは心胸郭比(48.1 vs 56.3%, p<0.05)・BNP(21.4 vs 405.2pg/ml, p<0.05)・6分間歩行距離(461 vs 205m, p<0.05)と体血圧(113 vs 99mmHg, p<0.01)であり、カテーテル検査でのRAP・PAP・Rp・CIには有意差はなかった。 治療開始後1年の段階では心胸郭比(46.5 vs 53.1%, p<0.05)以外に有意差はなくなっており、検査上の血行動態は差違がなくなる。しかし治療開始後5年の段階ではカテーテルでのRVP(57.2 vs 78.5mmHg, p<0.01)・systolic PAP(59.2 vs 80.5mmHg, p<0.05)・mean PAP(40.6 vs 54.8mmHg, <0.01)、Rp(9.6 vs 15.1U・m2, p<0.05)、MRIでのRVEF(47.6 vs 33.9%, p<0.05)は有意差を持って無症状群が良好であり、有症状群は良い状況を維持できなくなっていた。 この2群間で生存率に有意差はなかったが、無症状でも1999年以前に診断され治療が出来無かった5例は有意に生存率が悪く(p=0.034)、症状のない時点からの肺血管拡張薬による治療介入が、予後を大幅に改善し、治療後5年の血行動態を有症状者よりも改善することが示唆された。