[III-OR31-02] 高右室圧を伴う両側肺動脈狭窄症例に対する肝移植治療の適応について
Keywords:肝移植, 肺動脈狭窄, ステント
【緒言】肺高血圧症例の肝移植周術期死亡率は高く、そのリスクは平均肺動脈圧と肺血管抵抗によって分類される。この分類はドナー肝グラフト吻合直後の急激な容量負荷に右室が耐え得るかが基準となる。特に平均肺動脈圧<35mmHgの適応基準が最も重要であるが、末梢性肺動脈狭窄合併症例は、末梢肺動脈圧と主肺動脈圧・右室圧に乖離があり、この基準の適応が困難である。当院においては同症例に対してAcute Volume Challenge Test(AVCT)を施行し、右室拡張末期圧≦10mmHg、中心静脈圧≦10mmHg、さらに移植前のBNP≦50pg/mLを肝移植適応条件としている。今回、我々は乳児期より重度の胆汁うっ滞と両側末梢性肺動脈狭窄を合併し、緊急的ステント留置をはじめとした肺動脈への治療介入後にACVTを施行し、生体肝移植を成功させた症例を経験した。【症例】3歳6ヶ月男児。出生後、特徴的顔貌・黄疸をきっかけにAGSと診断。高度の両側肺動脈狭窄を認め、2ヶ月・4ヶ月時に両側肺動脈に対してステント留置。肝障害に対する加療目的に6ヶ月時に当院紹介。右室圧は左室圧を凌駕し、左右肺動脈にステント追加留置、9ヶ月・1歳時に両側肺動脈に対するバルーン再拡張術を行い、その後のAVCTからも耐術可能と判断し、1歳1ヶ月時に生体肝移植を施行した。現在術後2年が経過したが、右室の動きは良好で、肝機能の再悪化も認めていない。【まとめ】末梢性肺動脈狭窄による右室圧上昇は移植後の経過に影響を与えうる。肝移植後合併症や死亡率が高いAGSにおいても上記AVCT基準を適応することで安全に肝移植可能であったことから、肺動脈狭窄疾患などで右室圧が高い症例については上記ACVTの基準が有用であると思われる。