[III-OR31-03] 気管狭窄における肺動脈スリング合併例の検討
キーワード:肺動脈スリング, 気管狭窄, 完全輪状軟骨
【背景】 気管狭窄の約40~60%で肺動脈スリングを合併することが知られているが,その臨床像に関する報告は少ない.【目的】 肺動脈スリングを合併した気管狭窄症例の特徴を明らかにすること.【方法】2010年3月~2018年1月に当院に入院し,完全輪状軟骨を有する気管狭窄と診断した症例を対象に,後方視的に診療録を調査した.対象を肺動脈スリング合併の有無で2群(合併例, 非合併例)に分け,性別,合併症,気管分岐の低さと角度,気管狭窄長,症状出現の有無などについて比較した.【結果】対象は70例(男41例)で,肺動脈スリングは30例(43%)に合併していた.合併例と非合併例の比較では,片側肺低形成・無形成(合併例 vs 非合併例 以下同様,10% vs.18%),高肺血流性あるいは複雑性心疾患(以下心症例. 肺動脈スリング単独例は除外)(23% vs. 43%)の頻度は同様で,両側上大静脈 (67% vs. 33%, p = 0.005),腎・尿路奇形 (30% vs.10%, p = 0.033)は合併例で,染色体異常(3% vs. 28%, p = 0.008)は非合併例で有意に高率であった.また, 合併例で気管への介入(気管形成術, レーザー治療)が多く行われる傾向があった (70% vs. 45% p = 0.09). 片肺を除いた60例では,合併例は非合併例に比べ,有意に気管分岐部が低く (胸椎の高さで 5.3 ± 0.5 vs. 4.4 ± 0.6, p < 0.001),気管分岐.が広角(131 ± 16°vs. 97 ± 19°, p < 0.001)であった. また, 気管狭窄範囲は長い傾向があった (57 ± 16% vs. 51 ± 15%, p = 0.15). 片肺を除いたスリング症例27例で検討を行い, 心症例で有意に症状出現までの日数が早かった (心症例 vs 非心症例 37 ± 34 vs. 161 ± 145, p = 0.003). 【考察】 肺動脈スリングを合併した気管狭窄では,気管分岐部が低く広角である特徴があり,胸部レントゲンでの診断の契機になりうる. 新生児・乳児早期の心症例で気管狭窄を疑う場合には肺動脈スリング合併の可能性を考慮する必要がある.