[III-OR32-02] Failing Fontan患者におけるfenestration stentの有用性と中期予後について
キーワード:failing Fontan, fenestration stent, central venous pressure
【序文】フォンタン循環におけるfenestrationは手術後急性期の血行動態安定や慢性期の難治性胸腹水や蛋白漏出性胃腸症に対する治療としての選択肢がある。しかし、チアノーゼ遷延や塞栓血栓症、細菌性塞栓や脳膿瘍などのリスクもあり適応に関しては慎重にならざるを得ない。【目的】当院で行ったfenestration stentの有用性・中遠隔期の問題点について検討する。【対象・方法】2005~2017年の間に岡山大学病院で行ったfenestration stent患者について、手技・目的・デバイス・急性期の血行動態変化・有用性・現在の状態について検討を行った。【結果】患者数7名(男4)、体重9~28kg(中央値12kg)、年齢2.8~13歳(中央値6歳)。Fontan手術からの期間:10日~3年(中央値7ヶ月)。適応:Fontan手術後急性期LOS3、PLE1、難治性胸腹水2、多臓器不全(遠隔期)1。使用ステントサイズ:3.5~7mm、(Promus・Express Vascular)。血行動態変化:中心静脈圧17.4±1.9→15.1±2.6mmHg(p=0.02)、SaO2 92±2.7→80±0.9%(p=0.01)、sBP 70±6.8→78±5.9mmHg(p=0.02)。留置後介入:ステントサイズ調節1例、ステントバルーン形成術2例。フォローアップ期間:1ヶ月~5年(中央値2.5年)。改善が得られた症例:6/7。現時点でのSaO2 80-92%(中央値88%)。合併症:ステント脱落、血栓塞栓症、感染症はいずれも無し。開存性:閉塞1例、その他は良好な開存が得られている。【考察】ステント留置により静脈圧低下と心拍出の増加が得られると考えられる。血行動態変化は患者の状態によって左右される。LOSやPLEの改善は得られることが多いが、チアノーゼ増悪は顕著で有り、酸素投与や抗凝固療法が必須である。体の成長に伴いTCPC conduitの形態が変化していくことによりステントの形も変化する。ほぼ閉塞したステントに関しては再開通手技は無効で有り、ステント破損の危険性もある。手術で取り除くかどうかも含めてこれからの課題であると思われる。