[III-OR32-03] ファロー四徴症に対するBTSの肺動脈弁輪への影響
Keywords:ファロー四徴症, 肺動脈弁輪温存, BTS
【背景】ファロー四徴症(TOF)や類似の血行動態を示す両大血管右室起始症(DORV)では,根治術後遠隔期の肺動脈弁逆流が問題となり,弁輪温存術が望まれる.当院では,積極的な弁輪温存下での一期的根治を優先しているが,spell等でshuntを先行した症例も存在する.今回,shunt先行症例の弁輪を主とした転帰について検討した.【方法】1997年から2017年1月までの20年間に,当院にてTOFもしくはDORV/PSの診断で根治術を行った212例のうち,shuntを先行した24例を対象として診療録を後方視的に検討した.【結果】24例の基礎疾患はTOF21例/DORV3例で,男児11名.Shunt術は中央値で,月齢2.4(0.2~9.5),体重4.5(2.7~7.7)kgで施行された.Shunt術選択理由は,PGE1離脱困難,spellを含めたチアノーゼが15例,左室低形成が7例,肺動脈低形成が1例,他1例であった.根治術は,shunt術後,8.4(1.3~33)か月で実施された.肺動脈弁輪形態は,三尖1例,二尖13例,一尖7例(詳細不明2例)であった.肺動脈弁輪のZ-scoreの推移は,shunt前-3.5(-6.5~-0.36)→根治術前-2.1(-5.2~0.18)であった(p<0.01).このうち一尖形態の7例ではshunt前-4.6(-5.3~-3.1)→根治術前-4.5(-5.2~-2.2)であった(p=0.22).根治術時に,弁輪が温存された症例は15例(63%)で,このうち一尖例は1例であった. 残りの一尖例6例は生後2か月以内にチアノーゼのため介入が行われていた.【考察】Shunt施行例全例でみると,肺動脈弁輪の成長傾向がみられた.これは,肺血流増加に伴う右室流出の筋性狭窄部の血流量増加によると思われた.一方で,一尖形態の弁の場合には,成長傾向が乏しいことがわかった.こちらの群では,最終的な弁輪温存も望みにくく,shunt術に代わって近年世界的に行われている右室流出路に対するステント留置術のよい対象になりうることが示唆された.【結語】Shunt術により肺動脈弁輪は成長する傾向はみられる一方で,一尖形態ではこの傾向が乏しかった.