[III-OR32-05] ステント留置を行った異型大動脈縮窄の3ヶ月男児例
Keywords:異形大動脈縮窄, ステント留置, 血管内エコー
【背景】小児の異型大動脈縮窄の原因疾患には大動脈炎症候群に代表される血管炎症候群、線維筋性異形成などが挙げられる。乳児期早期に左室機能低下を伴って発症した異型大動脈縮窄に対して、ステント留置を行ったので報告する。【症例】3ヶ月男児。生後2ヶ月時の予防接種の際に心雑音を指摘され当院を紹介受診した。心エコーでは左室壁肥厚を認め、左室駆出率は46.1%、左室拡張末期経31.1mm(129%N)であった。BNPは382.4pg/mlと上昇を認めた。造影CTでは胸部下行大動脈の高度狭窄に加え、左総頚動脈も狭窄、左鎖骨下動脈は完全閉塞しており、腕頭動脈は拡大していた。血液検査では炎症反応の上昇はなく、血管炎のマーカーも正常であったが、狭窄の形態や分布から全身性の血管病変による二次的な縮窄が示唆された。胸部下行大動脈の長い病変の狭窄であり、手術侵襲が大きい事、二次的な縮窄では再狭窄のリスクが高いと考えられる事などからカテーテル治療を第一選択とする方針とした。入院翌日に心臓カテーテルを施行、左室収縮期圧160mmHg、拡張末期圧4mmHg,上行大動脈収縮期圧160mmHg、拡張期圧60mmHg、大腿動脈収縮期圧55mmHg拡張期圧50mmHg,下行大動脈最狭窄部径は1.3mmであった。血管内エコーでは狭窄部に中内膜の肥厚を認めた。狭窄部にステント留置(Omnilink Elite 10mm/29mm)を留置し圧較差は40mmHgに低下、その後の心エコーで左室駆出率は62%と改善した。治療後2ヶ月の時点で再狭窄を認めず経過している。【まとめ】乳児期の異型大動脈縮窄の原因は大動脈炎症候群が最も多い。本症例は血管炎を思わせる所見が乏しかったのにも関わらず、生後3ヶ月で既に頸部血管まで及ぶ高度狭窄に至っており、線維筋性異形成などの血管炎以外の病態も示唆された。本症例ではステント留置を第一選択とし、左室機能は改善したが40mmHgの圧較差が残存しており、二期的な後拡大を予定している。