[III-OR37-01] Ross術後におけるPA autograftの形態と血流解析
キーワード:Ross手術, 遠隔成績, 基部再建
【目的】小児大動脈弁疾患に対するRoss(Ross-Konno)手術は移植自己肺動脈弁(PA autograft)の遠隔期における拡大や機能不全が問題とされ、その適用に関しては議論の余地がある。術後遠隔期PA autograftの形態評価及び拡大症例の血流解析を行い検討した。【対象】1997年11月~2017年12月にRoss(Ross-Konno)手術を施行した55例。全例PA autograftによる大動脈基部置換を施行し弁輪拡大(Konno法) 9例、弁輪縫縮8例併施。手術時年齢9ヶ月~33才(中央値12才)、体重8.6~72kg(中央値38.7kg)。術後観察期間は最長20.2年、中央値11.1年。【結果】手術死亡、遠隔死亡はなし。遠隔期PA autograft弁輪径はZ値0.5±2.1、valsalva洞径はZ値3.8±1.9でありvalsalva洞が有意に拡大していた。PA autograft拡大による高度ARのため再手術となったのは2例(3.6%)。症例1)ARに対して17歳時にRoss手術を施行。PA autograft拡大によりmoderate ARを認め、左室拡大(LVDd 70mm)を来したためRoss術後12年目にBentall手術及び3弁付き24mm径ePTFE導管によるreRVOTRを施行した。症例2)ASRに対して11歳時にRoss-Konno手術を施行。PA autograft拡大によりsevere ARと左室拡大(LVDd 69.0mm)及びfunctional moderate MRを認めたためRoss術後20年目にAVR、Florida sleeve techniqueによるautograft基部の縫縮補強、Mitral annuloplastyならびに3弁付き24mm径ePTFE導管によるreRVOTRを施行した。術前4D flow MRIによる血流解析でLVEDVI/ESVI 216.68/126.72ml/m2, LVEF 41.5%, aortic flow regurgitant fraction 44.4%でありflow energy lossは対健常比7.87倍だった。【考察】Ross術後遠隔期にPA autograft基部拡大から高度ARを生じるとaortic flowの乱流と逆流のためそのenergy lossは高値となる。左心不全の改善には弁置換のみならず再基部再建または縫縮補強による修正が必要と考えられる。