[III-OR37-05] ファロー四徴症に対する自己肺動脈弁温存右室流出路再建術の中期遠隔期成績
Keywords:ファロー四徴症, 右室流出路再建術, 遠隔期成績
【背景】ファロー四徴症術後遠隔期の肺動脈弁閉鎖不全症(PR)予防に繋がる画期的な外科治療法は未だ確立されておらず、自己の肺動脈弁機能を可及的に温存する新たな右室流出路再建法(RVOTR)が模索されている。当院では肺動脈弁輪のZ-scoreが-3.0以内で弁尖が過度に低形成でない症例に対し、自己肺動脈弁尖を温存しつつ肺動脈弁輪を拡大するvalve-sparing手技(VS)を行って来たが、その手術成績と問題点を後方視的に検討した。【方法】対象は2010年以降にVSによるRVOTRを行った連続6例。手術時月齢中央値11 (7~16) ヶ月、体重中央値 8.6 (7.2~9.4) kg。肺体動脈短絡先行4例。特徴1:Tethering機能を維持する範囲内で肺動脈弁交連を切開、特徴2:主肺動脈から前方の肺動脈弁尖の弁腹中央まで切開、下方は弁輪を越え1.5cm右室切開、特徴3:楔状に切開された前方の肺動脈弁尖に0.6 % GA処理した自己心膜をあて弁尖拡大し、頭側に翻転した後に主肺動脈切開線を補填、特徴4:右室切開部を0.4mm ePTFE patchで補填し上方縫合線をGA処理自己心膜パッチの折返し線とし同時に弁輪を補強。【結果】弁尖形態は2尖5例、3尖1例であった。術後13ヶ月 (最大3年) の観察期間内に死亡・再手術例はなかった。術前平均肺動脈弁輪径は8.6mm (6.0~11.6mm, Z score; -0.6~-3.6)、術後最遠隔期でのRVOT平均圧較差は11.3 (7.0-20) mmHg, PRはGrade 1:4例、Grade2:2例。全例肺動脈弁輪は経時的に増大し、RVOT形態/右室機能共に維持されたまま成長している。【結論】当院のVSによるRVOTRでは極端な異形成弁尖や狭小弁輪は除外しているが、元来trans-annular patch repairを余儀なくされていた比較的狭小な肺動脈弁輪例でも生理的なcoaptationやtethering機能を温存したまま弁輪拡大が可能で、概ね満足し得る結果が得られている。今後遠隔期の肺動脈弁・右室機能等を慎重に検証しつつ、遠隔期PR予防のための最善の治療体系を模索して行きたい。