[III-PD06-03] 多発性体静脈ー肺静脈側副血行による心不全を生じたフォンタン手術後の多脾症候群例
キーワード:多脾症候群, 静脈ー静脈側副血行, 難治性心不全
症例は15才男児。生直後より多脾症候群、右室型単心室、両大血管右室起始、肺動脈狭窄、共通房室弁逆流、半奇静脈連結と診断され、段階的Fontan手術の治療方針で、(1)1才2ヶ月 TCPS (2) 4才 Extracardiac TCPCが行われた。 TCPS後よりveno-venous collateral(VVC)およびaorto-pulmonary collaterals(APC)が多発し側副血行路に対してコイル塞栓術を複数回反復していた。また12才時、TCPC術後進行した共通房室弁逆流に対して共通房室弁形成術を追加した。 TCPC後からSpO2は85-90%とdesaturationを認めたが、術後5年より易疲労感、胸水貯留を呈する心不全のために入退院を繰り返すようになった。13才より低酸素血症がさらに増悪し(酸素投与下でSpO2が65-70%)、喀血を生じるようになった。 血行動態的には平均中心静脈圧は16mmHg、平均左房圧は13mmHg, 心拍出量は5.2 L/分/m2とhigh-outputで、右室EFは46%であった。 造影上は無数のVVCが無名静脈および半奇静脈から肺静脈へ接続し、また巨大な左肺動静脈瘻(PAVF)を合併していた。VVCおよびPAVFによる心不全のコントロール目的で、Graft Stent( Gore Excluder)を用いたhemoshielding治療を行う方針とした。右内頸静脈と左大腿静脈からアプローチして2回に分けてGore Excluderを合計6本使用し、その隙間をコイルで閉塞するようにしてVVC exclusionを行った。VVC-exclusion後心不全は一時的に軽快したが、その後は巨大なPAVFによる低酸素血症の進行と、心不全の再燃により最終的には失った。この症例の初期からの治療戦略とVVC exclusion法、PAVF治療法についてどうするか議論していただきたい。