[III-PD07-01] 母体肥大型心筋症の双胎妊娠を経験して
キーワード:肥大型心筋症, 妊娠, 成人先天性心疾患
【背景】母体肥大型心筋症(特に閉塞型)は高リスク妊娠のため,妊娠前より患者とそのリスク共有を行うことが重要である.【症例】生後5か月時に心エコーで肥大型心筋症と診断した.1歳時,心室中隔/左室後壁厚(IVS/LVPW)=19/7mmと非対称性中隔肥厚顕在化,5歳時,IVS/LVPW=25/11mm,左室流出路圧較差(LVOT-PG)56mmHg,8歳時,IVS/LVPW=34/13mm,LVOT-PG100mmHgとなり,β遮断薬に加えシベンゾリン内服を開始した.幸い治療奏功.14歳時,IVS/LVPW=25/17mm,LVOT-PG30mmHg.失神既往なし.思春期に入り本人も怠薬が目立ち,16歳時予期せぬ妊娠を経験.周囲も十分な受け入れがないため妊娠中絶.IVS/LVPW=11.6/4.1mm,LVOTO-PG17mmHg,左室拡張末期径(LVDD)44mm(96%N),駆出率80%と拡張相に至らず.19歳時,予期せぬ妊娠も妊娠中絶.22歳時,妊娠時は本人の意向も踏まえ厳重妊娠管理を約束し妊娠継続とした.妊娠中期まではイベントはなかったが,妊娠37週,LVDD48mmであったが拡張障害所見あり,BNP117pg/dL(←46.6)と上昇した.妊娠40週,自然陣痛発来し,3480gの児を娩出.LVDD55mm,駆出率65%,IVS/LVPW=17.7/10.5.産後引き続きβ遮断薬内服を強く指導したが再び外来通院が疎遠となった.24歳時,再度双胎妊娠.心臓MRI検査では遅延造影効果がみられ強い心筋障害から妊娠はすすめられないものの,本人の希望から早期娩出と厳重な自己管理を約束し妊娠継続とした.妊娠中期まではイベントはなかったが,妊娠35週から息切れが強くなり,左室拡張末期径63mm,ごく少量の心嚢液貯留が見られるようになったので入院となった.入院中ホルタ―心電図ではVT short runが見られたため,ソタロール内服を追加したので,妊娠早期帰結の方針として妊娠35週4日に帝王切開で娩出した.【考察】乳児期から医療管理を受けているものの妊娠対するリスク共有が不十分であったかもしれない.