[III-PD07-03] てんかん合併妊娠と思われていた1例
Keywords:QT延長症候群, 硫酸マグネシウム, けいれん発作
症例は17歳、1妊0産。妊娠1年前に早朝、自宅で意識消失発作があり、その翌日も同様の発作があたため近医総合病院を受診した。脳波に異常ありとされ、てんかんと診断、2ヶ月ごとに通院をしていた。その後、妊娠、近医産婦人科に妊娠23週で初診、妊娠26週で胎児肺静脈の左心房への還流が確認できなかったため当院を紹介。当院で総肺静脈還流異常症と診断、出生後の治療の必要性を説明し、外来で管理していた。妊娠34週4日に有痛性の子宮収縮を認め切迫早産と診断、硫酸マグネシウムの投与を開始した。1.8g/hrで副作用が強く出現、また、血中濃度が治療域上限に達したため減量した。児の外科的介入の必要性を考え、可能な限り妊娠期間の延長を図ることとし、塩酸リトドリンの併用を開始した。妊娠35週3日、妊娠37週5日で硫酸マグネシウム投与を中止、翌日、経膣分娩となった。児は2470g、同日、修復術が行われ、経過良好であった。母体経過に異常なく退院、1ヶ月健診でも産科的な異常を認めず終診とし、てんかんの定期受診は前医で継続することとした。その数日後に意識消失発作を4回認め近医受診、この際の心電図でQTc 567msec、Torsa des Pointes発作と考えられる心室頻拍が記録された。当院循環器内科に搬送、遺伝子診断の結果、QT延長症候群2型と診断された。pitfallは1. 前医でてんかんとしてすでに治療中であった。2.妊娠初診が23週と遅かった。3. 胎児心疾患のための紹介であった。4. 総肺静脈還流異常症で外科的介入が必要であったが切迫早産で治療が必要となった。副作用などのためその管理に手を取られた。5. ただし、図らずも硫酸マグネシウムはTdP予防に有効であった可能性がある。6. QT延長症候群は分娩後の増悪。比較的遠隔期までが知られており、1ヶ月健診では観察期間として短い。以上、当院での経験から得られたことを共有したい。