[III-S13-01] 弁輪拡大を伴う大動脈弁置換術 - Nicks法, Konno法
Keywords:AVR, annulus enlargement, indication
【背景】狭小大動脈弁輪を伴う弁膜症に対する外科治療は、弁形成術、Ross手術、人工弁を用いた弁置換術(AVR)に大別される。形成術やRoss手術は弁輪発育のポテンシャルを有するが、durabilityでは機械弁に劣る。われわれは主に乳児にはRoss手術、弁輪拡大によりAVRが可能であれば機械弁を採用してきた。【目的】狭小大動脈弁に対する弁輪拡大を伴うAVRの適応、方法、術後経過について検討すること。 【対象と方法】2007-2018年に当院において、二心室修復が可能な狭小大動脈弁に対して大動脈弁手術が行われた13例(青年期を除く)のうち、弁輪拡大を伴うAVRを実施した7例を対象とした(除外6例はRoss+/-Konno手術)。手術適応、術式、術後経過について後方視的に検討した。【結果】平均観察期間は3.3年、死亡なし。AVR 7例の内訳はNicks法 5例、Konno法 2例。年齢は中央値7.5(3.9-12.6)歳、平均体重22.6(11.4-57.1)kg、平均体表面積(BSA)は0.81(0.52-1.49)m2 (RossおよびRoss-Konno手術はBSA0.52m2以下)。手術適応は「ASの進行/Vfによる心肺停止」が1例、「AS+AR」の進行が3例、「ARによる左室拡大」が3例。術前平均大動脈弁輪径は15.9mm、置換した機械弁サイズは平均18.0mm(16-20mm)。Konno法を用いた2例はBSAが最小(0.52, 0.53m2)であった。Nicks法の弁輪拡大部パッチ(異種心膜)幅は15-24mmであり、必要に応じAorto-mitral curtainを僧帽弁弁輪に平行に切開した。全例supraanular positionで縫着した。術後大動脈弁位流速(peak)は平均2.2m/s(1.7-3.0)であった。全例ワーファリン、アスピリンを内服し、血栓塞栓症・出血性合併症を認めなかった。【考察】弁輪拡大を伴うAVRの中期成績は概ね良好であった。術前Vfから蘇生した症例は心筋肥大が顕著で、術後も弁下で血流加速がみられた(3.0m/s)。従って無症状でも左室肥大の進行度が手術介入のタイミングを決める一要素になりうると考えられた。