[III-S14-02] 心不全ステージBのCHD術後患者に対する心保護療法に何を期待するか?
キーワード:心不全, 心保護療法, 予後
先天性心疾患CHDはごく一部を除き、小児期の治療成績が安定したものとなっている。CHD患者の成長と増加にともない、現在は成人先天性心疾患(ACHD)の医療体制整備に診療がシフトしているが、その体制構築は緒に就いたばかりである。一方、末期心不全に対する心臓移植医療もドナー不足から限定された医療といわざるを得ない。こうした現実のなか、小児循環器科医に求められるCHD医療(とくに術後管理)は“心不全(広義には循環不全)発症患者を最小限にする”ことといえる。最新(2018/03/23)の心不全ガイドラインでは“心不全とそのリスクの進展ステージ”が示され、心不全発症予防の重要性が指摘されている。CHDはASD、VSDといった単純型CHD術後を除くと、多くのCHD術後は“ステージB”からの再出発であり、何らかの心保護療法の導入を検討してよい段階にあると考える。当院では心保護を目的に、Fontan循環(perfect例も)には抗血栓療法に加えてACE-I(0.2mg/kg)またはARB(0.2mg/kg)/β遮断薬(0.3~0.5mg/kg)が、Fallot術後PR症例にはACE-I(0.2mg/kg)またはARB(0.2mg/kg)が処方されている。そのアドヒアランス維持のために1回/日の服用を原則とし、15年以上が経過する。その効果判定にはさらに長期間の観察を要するが、効果不明をもって予防治療を躊躇することは不適当と考える。また、現在のCHD心臓移植待機例の病歴から、学校卒業以降の未受診(drop-out)期間の存在がリスク因子として浮かびあがる。CHD術後患者に対する心保護療法には心不全発症予防効果のみならず、患者の自立(自律)およびヘルスリテラシー獲得を促進し未受診(drop-out)を抑制する効果も期待したい。