[P01-04] 周産期心不全に陥った先天性心疾患術後2症例の検討
キーワード:先天性心疾患術後妊娠, 周産期心不全, 左心系弁逆流
【背景】近年、医療技術の進歩により先天性心疾患(CHD)合併妊娠症例が増加した。妊娠・出産適応指針が確立されたが、逆流性疾患に対する指針はNYHA分類に沿ったものしかみられない。【目的】今回我々は、軽度の大動脈弁逆流を合併したNYHA1度の妊婦症例が周産期に急性心不全を発症したことから、この発症機序について検討した。【症例】症例1は心室中隔欠損閉鎖術後、大動脈弁逆流極軽度、肺動脈弁狭窄軽度。妊婦健診は問題なかったが、妊娠36週のBNP値が80.2pg/mLと高値を示した。妊娠39週に突然起座呼吸となり、緊急入院・緊急帝王切開で出産。入院後から利尿剤、出産後から水分制限、末梢血管拡張剤が開始され心不全は改善した。現在も外来継続治療中。症例2は完全房室中隔欠損術後、大動脈弁逆流軽度。妊婦健診はBNP値含めて問題なかった。出産中に急激な血圧低下を認め輸液負荷で状態安定。退院1か月後に起座呼吸となり緊急入院となった。水分制限、利尿剤、末梢血管拡張剤で軽快し、現在も外来継続治療中。いずれの症例も心不全増悪時に大動脈弁逆流の悪化を認め、周産期の体血管抵抗・循環血漿量変化が心不全発症の契機となったことが考えられた。【考察】妊娠中に循環血行動態が変化することはよく知られている。循環血漿量は妊娠34週をピークに50%前後増加する。体血管抵抗は妊娠初期から低下するものの、妊娠36週頃から急激に増加する。これに加えて、分娩直前の子宮収縮による循環血液量の更なる増加、分娩直前の全身血管抵抗増加、産後も引き続く子宮サイズ正常化に伴う循環血液量の増加、授乳などによる頻回の循環血漿量変化などで、左心系逆流疾患の悪化が起こると考えられた。【まとめ】左心系逆流疾患を有するCDH合併妊娠症例は、経過良好な症例であっても周産期において注意深い管理が必要と考えられた。