[P02-01] 治療方針に苦慮した高度門脈低形成を伴う門脈体循環シャントの2例―シャント血管閉塞試験と閉塞下造影の有用性―
キーワード:門脈体循環シャント, 門脈低形成, 高アンモニア血症
【背景】高度の門脈低形成を伴う先天性門脈体循環シャントではシャント血管閉塞可能か肝移植を選択せざるを得ないか治療方針に苦慮する例が存在する。【症例1】6歳女児、ファロー四徴、高度肺動脈低形成があり、姑息術の状態で高度のチアノーゼを呈していた。出生時から門脈体循環シャント、門脈無形成と診断され、高アンモニア(NH3)血症(100-200μg/dl)を呈していた。4歳頃からNH3の上昇があり、蛋白制限などを受けていたがNH3が200-300台で推移し5歳時に精査。シャント閉塞試験で腸管膜静脈圧は5→30mmHgへ上昇し閉塞下造影では雲母状の門脈をわずかに認めた。心疾患のため肝移植の適応となりにくく外科的にシャント部分結紮術を行い 、術後腸間膜静脈圧は18mmHgとなった。その後一時NH3は低下したが再上昇があり術後6か月で再評価。部分結紮部位はわずかに流れるのみで肝内門脈の発育を認めたが、新たな側副路による門脈体循環シャントが出現。同部位の閉塞試験で腸間膜静脈圧は12→15mmHgの上昇にとどまり、AVP2による同部位の塞栓術を行った。塞栓後NH3は100台前半に低下し、現在経過観察中。【症例2】11歳女児、ターナー症候群。前医で生後5か月時に造影CTで門脈体循環シャントと診断された。NH3の上昇(100μg/dl台前半)、肝結節を認めた。8歳時閉塞試験で腸管膜静脈圧は7→33mmHgへ上昇し造影では肝内門脈は描出されなかった。(但し閉塞不完全) 門脈欠損と診断され肝移植の方針となっていたが、肺高血圧が疑われ当院で11歳時精査。軽度の肺高血圧(平均28mmHg)と肺動静脈瘻を認めた。再度閉塞試験を行い腸間膜静脈圧は11→23mmHgの上昇に止まり閉塞下造影では肝内門脈が確認された。今後シャント閉塞術を行う予定である。【結語】門脈無形成と診断されるような高度の門脈低形成を伴う門脈体循環シャントにおいて、シャント閉塞試験や閉塞下造影による評価は治療方針決定に重要である。